第8話 『特別な人』

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 翌日は日曜でうちで花と何か見繕ってDVD鑑賞会をする予定に

なっていた。



 二人で鑑賞前にコーヒーを淹れているとインターホンが鳴った。



 ドアがノックされ、「匠吾、お客様よ。島本さんって方」


 

 どうして彼女が家へ? 


 自分の頭が真っ白になっていくのが分かる。

 昨夜の今朝で、相手は島本玲子。


 繋がらないけど、繋がっているのかもしれない状況に眩暈を覚えた。



 花の顔を見るとこわばっている。

 何を言えばいいのか、俺は成す術もなく言葉が出ない。


 とにかくと、玄関に向かう。


          ◇ ◇ ◇ ◇



「あぁ、良かった。向阪さんご在宅だったんですね。

 昨日メールいただいてたので直接お願いしたほうがいいかと思って

来ちゃいました。


 突然でごめんなさい。

 削除依頼のメール見ました。


 でも記念の画像持っていたいんですけど、駄目ですか?」



 この時初めて俺は彼女の異常性に気付いた。




 魔の悪いことに花が部屋から出て来て俺たちの遣り取りを

聞いていたようで……震える声で島本玲子に話し掛けた。



「昨日向阪くんとどこかへ行ったんですか?」


「花、悪いけど島本さんと話があるから部屋に戻ってて」



「島本さん、その消したくないという画像見せてもらえません?

 私見たいです」


「ええっ、いいですよ」


『ちょっ、なにやってんだよ』

止めようと思って島本のスマホを奪おうとしたけど阻止できず、

島本は俺とのツーショットを花に見せてしまった。



 俺は急いで島本からスマホを奪い画像を削除した。



「なんでわざわざ家なんかに……」



「あの、すみませんでした。

 残念ですけど画像はあきらめますね。

 じゃぁ失礼します」


 


 そう言い残し島本玲子は帰って行った。


 火種を残して。



          ◇ ◇ ◇ ◇



「匠吾、どういうことなのかな?

 夜景のきれいなお店だったね。


 夜デートしたんだ。

 どうして? 


 島本さんのほうを好きになったんだね?」




「ちっ、違う。

 好きなのは誓って花だけだ。


 彼女に明日訊いてみて、ほんとに会って問題集渡しただけだから」




「問題集?」


「正社員になるテストに備えてどんな勉強をすればいいかって訊かれてさ、貸してあげたんだよ」



「それがどうして社内じゃなくて夜出て行ってお酒の場で……になるの。

 分かんないよぉ~」



「明日彼女に訊いてくれていいから。

 とにかく店には行ったけどそれ以上のことは何もなかったんだから」



 そう花に言い訳すると彼女がいきなり靴を履いて玄関を飛び出して

行った。



「花っ、どこ行くんだ」

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