猛攻

「恋!」


澪は着地と同時に駆け寄る

恋歌は凍りつき動かない

(下手に動かせねぇ……)

下手に触れて氷に亀裂が入ればそのまま恋歌に被害が及ぶかもしれない


『えぐっ』

『全方位喰らえば凍る……えげつねぇ、よく2人避けれたわ』

『レンちゃーん!』

『炎で溶かせないのかな?』

『れんちゃん死んだんじゃ……』

『嘘だろ……れんちゃん!』


「シズク、恋にシールドを頼む!」

「フォヌォロィナ」


シズクが結界を展開する

一部の異能を除いた異能は使用者が死ぬと強制的に解ける

(速攻で倒す)

モタモタしていると恋歌が死にかねない

凍りついただけならまだ生きている可能性はある

シズクが炎の剣を氷に刺して炎で氷を溶かす

続けて炎を飛ばして魔物の周囲の氷を溶かし魔物にも飛ばす

魔物への攻撃は避けられる

氷が溶けたことで澪が動きやすくなった


『頑張れー』

『かてぇぇ!』

『負けるなぁ!』

『倒せええ!』

『そんな奴ぶっ飛ばしちゃえ!』


異能で目の前に接近して槍を振るう

氷に防がれる

高速で突きを連続で繰り出して攻撃をする

防御している氷をどんどん削っていく、攻撃の手を緩めない

魔物が後ろに飛び退いても異能で接近して攻撃する

槍が空を切ろうと関係無く当たるまで氷を壊せるまで槍を振るい続ける

槍を思いっきり叩き付け氷を削り本体に槍を突き刺す

逃げるように後ろに飛び退こうとする魔物を捉える


「逃げんな」


逆手で刀を抜き地面に突き刺すように先端を地面に触れさせる

凍らせる能力、地面を凍らせて魔物の足を凍らせ動けなくする

そして氷の防御を砕いて本体に攻撃を畳み込む

猛攻、荒々しく攻撃を叩き込む


『レイさんやっちまえ!』

『頑張れー』

『本体を削れてる! 押せぇぇぇ!』


魔物は叫び再び恋歌を凍らせた氷の攻撃をしようとする


「零さん!」


シズクが剣を零に投げる

異能で異能で移動して受け取る

シズクは結界で氷の攻撃を防ぐ

着地して炎で氷を溶かす

魔物も炎で澪に凍らされた足元の氷を溶かす

剣に炎を纏わせる、出力最大

異能で目の前に移動する

戦いの中でその行動を取る事を学習していたのか魔物は杖を前に出して移動先に炎を放つ

再び発動するまでの僅かな時間に炎が澪に掠る、軽く火傷を負うが気にせずに再び異能を使い背後に回る

背後から炎を纏った剣を振るう

氷の防御を物ともせず溶かし魔物を焼き切る

真っ二つになった魔物は倒れる


『おぉ倒した!』

『炎の剣を渡したのか! 良い判断!』

『レイさん! シズクちゃん!』

『勝ちだぁ!』

『ナイスー!』


「ナイスです零さん! あっ、火傷回復しますね」


コメント欄は勝利を確信する

魔物は剣で両断された、倒れた魔物は転がっている

シズクも勝利に喜んでいる、結界を展開して傷を癒す

ただ1人澪だけは違和感を持っていた

(何だこの違和感)

その理由は魔物を見て気づく

魔物が消滅しない

直ぐに剣で頭を刺すが黒いモヤが出るだけで消滅はしない


「本体では無い?」

「どうしました?」

「この魔物消滅しない」

「えっ!? そんな……まさか今戦ってたのは本体じゃなくて……」

「……!? 上か!」


上で音がしたのに気付いて剣を振るい炎を飛ばす

炎は相殺される


「あれが本当のダンジョンの主か」

「人型の魔物……?」


炎で一瞬だけ姿が見えた

それは今倒した魔物とは違う魔物が天井に逆さで張り付いていたのだ

魔物は降りてくる

その姿はまるで人のようだった


「さっきの魔物より強そうですね」

「だろうな。恐らくさっきのは分身か使い魔か何かだと思うぞ」


『新しい魔物?』

『人型だ。てかほぼ人だろ』

『なんかめっちゃ強そう』

『紳士風……人では無いよな?』

『流石に人では無いだろ』

『あの魔物はこの人型の魔物の使い魔みたいな感じか?』

『レイさんの言う通り分身の可能性もある』


帽子を被り仮面を被りスーツに身を包む、紳士風の魔物

仮面は魔物が着けていた物と同じ形と模様をしている

顔の前で黒い手袋をしている左手で指を鳴らす

恋歌を包む氷が溶ける

意識の無い恋歌は支えを失い地面に倒れる


『れんちゃん解放された!』

『無事!?』

『無事でいてくれ』


「恋ちゃん! よかった生きてる」


結界を解除して直ぐに駆け寄ったシズクが確認すると息はある

今は気絶しているだけで時期に目を覚ます


『生きてたか』

『ビビったぜ』

『てかなんで解放したんだ?』

『魔物だよな? 攻撃もしないし変な魔物』

『さっきの奴より断然強いよな? やばくね?』

『れんちゃんは気絶してるから戦えるのは2人、厳しそうだな』

『逃げ道は塞がれてるしな』


ホッと安堵の息を漏らす

澪は槍を仕舞い刀と剣を構えて魔物の前に立つ


「仲間を解放してくれてありがとう、で戦うのか?」


澪がそう聞くと魔物は言葉が理解出来るかのように首を横に振るう


『言葉に反応した!?』

『まじかよこいつ知性ある魔物か』

『そんなの聞いた事ねぇぞ』

『知性ある魔物とか絶対やばいじゃん。本当に4級?』


知性のある魔物は前例が無い

澪の戦ったライオン型の魔物も何処と無く知性を感じたがこの魔物はしっかりと反応出来ている


「戦う気は無いのか?」


首を縦に2回ほど振る

肯定のつもりだろうか再び魔物が指を鳴らすと下に続く階段が現れる

魔物は階段を指差す

(帰るなら見逃すって意味かそれとも罠か……どちらにしろこいつに勝てる気がしねぇ)

少なくとも先程の魔物より強い


「4級の魔物ってのは3級より弱いんじゃねぇのかよ……ライオンみてぇな魔物といい強過ぎるだろ」


その言葉を聞いて魔物は考えるように顎に手を添える

そして手のひらを拳で叩き澪を指差す


「覇王討ち取った人間」


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