第10話 あなたに似合うドレスを


「もちろんですよリリア様!

 似合うドレスを一緒に考えましょう!」



 レベッカは隣に座るリリアの手を掴み、目を輝かせて同意した。


 リリアも了承をもらえたのが嬉しかったのか、ほっとした表情で微笑んでいる。



「では早速ですが、立ってもらっても良いですか?」



 レベッカがそう声をかけると、リリアはすっと椅子から立ち上がった。


 小柄な彼女を、上から下まで眺める。


 胸は小さく華奢、ヒップも肉があまり無く、背中から腰にかけて曲線になっている。



「失礼しますね」



 そう一言声をかけ、レベッカはリリアの背後へと回る。


 肩を撫でると、肩甲骨は出ている。腰も細いが、位置は低め。


 二の腕も細く、全体的に筋肉はあまりなく、薄い脂肪の上に皮膚を纏っているような印象だ。


 よく言えばスマート、悪く言えば女性らしい丸みがなく、少し貧相である。



「なるほど、リリア様は骨格ウェーブですね」


「骨格ウェーブ?」


「女性の体型には三種類ありまして、筋肉がありグラマラスなストレートタイプ、骨格のしっかりしたナチュラルタイプ。

 そしてリリア様の、ソフトで華奢なウェーブタイプです」



 指を立てながら、わかりやすく言葉にする。


 前世でファッション関係の仕事をしている際に学んだ、骨格診断の知識を使う時が来たようだ。



「それを踏まえた上で、長所を活かし短所を隠す服を着れば、魅力は倍増しますよ。いや、しますわよ!」



 グッと親指を立ててノリノリなレベッカに、リリアは興味津々に問いかける。



「どういうドレスが良いのでしょうか……?」


「ええ、まずは胸元にフリルがあると良いですね。

ボリュームをつけるために華やかにスパンコールも散らしちゃいましょう」



 胸元にアクセントをつけ、貧相にならないように見せる。



「スカート部分は裾に向かって広がるフレアタイプが良いでしょう。

丈はあまり長いと重たく見えるのでマキシ丈でなく膝丈で。

舞踏会でダンスを踊った際に、ふわっと舞う感じが良いですね」



 レベッカはテーブルに置いてあった紙と羽ペンを持ってきて、簡単にデッサンを描く。



「首元には大きめのネックレスをつけ、髪の毛は巻いてウェーブにしましょう。

大人っぽく華やかになります。あ、イヤリングも大きく垂れたやつが良いかな」


 リリアと手元の紙を交互に見ながら描き込んでいくと、どんどん想像が膨らんでいく。



 目をキラキラさせて、興味深そうにレベッカの描いた絵を見て頷いているリリア。



「そして、リリア様は透明感のあるきめ細かい肌質で、瞳は赤みがかったブラウンなので、おそらくブルベ夏。

  ……くすみカラーやパステルカラーが合いますね。原色系はやめましょう」



 袖からのぞく細い腕を見ながら、リリアの肌の質感まで凝視するレベッカ。



「髪の毛がピンクベージュなので、ドレスもピンクにしてしまうと甘すぎで、せっかく上品なフリルにしたのに台無しよね。薄いブルー……いや」



 ぶつぶつと独り言を言いながら、ハッと思いついたようにレベッカは目を見開く。



「ラベンダー色にしましょう!

 華やかだけど上品で、子供っぽくなりすぎない柔らかい雰囲気!」



 最強の答えが出たと、レベッカはガッツポーズを取った。

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