第41話 陽菜乃の視点

 世界は灰色で、悲しいことばかり降り注ぐ。

 幸福だった時間は短くて、私が幸せだと思った瞬間、その時間は砕け散る。


 母の死によって家族が壊れた。

 高校の一人暮らしを始めて、ようやくできた居場所は足の怪我で崩れ去った。

 幸福を望んではいけない、そう思っていた私を変えてくれたのは煌月先輩だった。

 私に日常を当たり前のように与えてくれて、選択肢を増やしてくれる。


 煌月先輩はいつも寄り添ってくれた。

 私が泣きそうなとき、崩れ落ちそうな時に必ず気付く。

 私の飛び越えられない不可能を、可能にしてしまう。何度私が諦めても、この人は諦めない。

 偽善だと言いながらも、ありとあらゆる手段を使って私に道を指し示す。

 同情や哀れみで近づいて、勝手に失望して離れていく大勢に対して、先輩だけは辛抱強く支え続けてくれた。


 この世界に再転生してもそうだ。

 先輩は変わらない。

 私のトラウマに気付いて、スタートを遅らせることになったのに責めなかった。


 こんなすっごく重くて、面倒な私を――愛してくれた。何度も何度も私を掬い上げてくれる。

 私が何も言わずに逃げ出しても、先輩は私を信じて追いかけてくれた。

 好きになったのが、先輩で本当によかった。

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