ハンバーグは異世界にあるのか?~異世界来たけど言葉が通じねぇ!?~

三重知貴

0話 プロローグ 異世界は都合の良い世界

なにから整理すればいいのかわからいけれど、異世界に来たと確信した。


 そう思う理由は色々あるけれど、まずここは森だ、俺はそんな田舎に住んでいない。むしろ都心よりだったと思う。

 次に、月は3つ目もないはずだ。そもそも空に浮かぶあれは月なんだろうか。

 あと、俺の身体能力が異常だ。俺は学校で平均よりできるかどうかぐらいのはずなのに今は100m2秒くらいで走れる。

 

 最後に、この少女の言葉だ。


「蜉ゥ縺代※縺上l縺ヲ縺ゅj縺後→縺??」


 言語がなに1つわからねぇ。どうなってんだ?




 



 ――そんな意味不明な出会いより、1時間ほど遡る。


 俺は寝て起きて気づけば、いわゆる異世界的なとこに来てた。

 そしてバカでかい熊みたいな怪獣に見つかって襲われていた。

 

 「こんなでけーやつが熊なわけねーだろ!馬鹿でか怪獣だろうがよー!」


 とりあえず走りながら後ろを見て考える。


 まず後ろの怪獣だが、見た目はどこかで見たことがある熊だ。問題は異常なほど大きいとこだ。そこらの森の木よりも遥かに大きい。しかも爪が俺の知ってる熊のものではない。完全に刃物みたいな鋭利さだ。ただでさえ森の木をなぎ倒してながら走るあのパワーに、あの爪が合わさったら間違いなく自分の体が二分割される。


 「いや飯になるのはいや…………ん?」


 おかしくないか?

 いやあの怪獣がすでにおかしいのだが、冷静に考えるとなんで俺逃げられてんだ?


「そもそも俺疲れてない?」


 なんやかんや5分くらいは走ってる気がするのだが、なんか疲れてない。そもそも走りが速い訳でもない俺がなんで10m以上はある怪獣に追いつかれていない?てかなんでこんな思考する余裕がある?


「もしかしてチートってやつか?」


 異世界物といえばチートは定番だがまさか、俺にもそういう感じか?貰った覚えはないけれど、ここ異世界ぽいし。


 しかしチートがあるなら戦うか?いやあの怪獣に通じるかはわかんないし、足が速いだけのチートとかだったら即死だろうしな。あんまリスクは取りたくない。

 そんなことを考えてたら目の前に大岩があった。

 

「あっ、やべっ!」


 咄嗟に大岩を飛び越えようとするために手をついた。そうすると岩に手がめり込んだ。


「は?」


 岩がもろかったわけじゃない。明らかに堅そうな見た目をしていたし、そもそも脆くなっても岩はこんな雪に手を押し込めるような形でめり込まないだろう。


「あっ」


 岩に気を取られていたら、あの怪獣が背後で腕を振り上げていた。

 

 終わった。両親よ、先に旅立つ不孝をお許しください。


 怪獣の鋭利な爪は俺の首に向かって全力で振るい降ろされ俺の人生は…………幕を下ろさなかった。


「イッ」(いってええええええええ)


 首とおさらばとはならなかったが吹き飛ばされて気にぶつけられた。


 いや俺なんで生きてんだ?痛いのは痛いが死ぬほどじゃない。喉をやられたからか声が出しずらい、でもなんとなく死ぬと感じではないし、まじでチートがあったのか?いやそれはあとでだ、いまはまずあの怪獣だ。


 怪獣の方を見るとこちらをじっと観察してきている。


(あきらかに狩りって感じじゃないよなあれ)


 さきほどまでとあきらかに違う雰囲気、おそらく野生の勘で俺のことを脅威と感じたんだろう。


「グオオオオオオオオオオオ」


 咆哮と共に突進してくる怪獣。これはもう、俺はチートを信じるしかないようだ。


 向かってくる熊に向けて俺は全力で拳を振り上げる。


「あああああああ」


 叫びながらの全力パンチ。喧嘩も人を殴ったことも経験はなかった。そもそもこんな怪獣怖くて逃げたい。そんな思いから目をつぶりながら出してしまったパンチはたしかに当たった感触があった。

 

 目を開ける。


 そこには倒れた怪獣がいた。


「やったのか?」


 フラグっぽいが、これはやっただろう。流石にチート相手に勝てる敵とか異世界にいないでくれよ。


「ウウウウウウ」

「ですよねー!」


 いや全然生きてた、こいつ。いやでも今のでたぶん俺の方が強いっぽいことはわかったし、勝負しても勝てるのでは?


 起きた怪獣はじっとこちらを見ている。


「たのむから帰ってくれないか。」


 心からの願いである。異世界なら動物でも人間の言葉を話せたりしないのか。ほら漫画とかならいるじゃんそういう生物いっぱいさ。

 藁でも罠でも、なんでもいいから何かに縋りたいこの状況、動物が話してくれたらどれほど楽か。そんなことを考えていると目の前の怪獣は後ろに動き出した。


 じっくり俺のことを見ながら一歩一歩と後退している。これは俺のことを勝てないとわかってくれたか?それとも言葉が通じた?


 10歩ほど離れたところで怪獣は一気に走って森の中に消えてしまった。


「ふ~、やっぱ言ってみるもんだな。」


 言葉が通じたかともかく引いてくれて本当によかった。とりあえず木に背中を預けながら座って落ち着く。


 「しかし、ここ本当に異世界みたいなんだよなー。空に月みたいなの3つあるし、熊は怪獣だし。まぁチートあるからそこはいいか。」


 やっと落ち着けて色々と周りを見渡す。よく見ると植物とかもなんか見覚えがないものもある。完全に異世界に来たと思う。


「とりあえず、これからどうするか。まぁ人を探すところか。町とかあるかな近く。」


 なんか自分が妙に冷静な気がするがこれもチートか?

 とりあえず、異世界でも生きるには人のいるとこに行かなければ。チートで死なないかもだが、それはわからないし、町に行けばなんかあるだろう、おそらく自分はこの世界で弱い方ではないはずだと思うがそこらの確認も町でわかるだろう。最悪無双できなくても強ければ仕事ぐらいはできるだろう。


「もとの世界は……今は無理だな」


 帰れるなら前の世界に帰りたいがなんもわからない。とにかく明日生きることを考えて人のいるところを探さなければいけない。


「とりあえず森を抜けるか!」


 今後の方針も決まったところで出発しようとすると少し遠くから大きな音がした。


「ウワアアアアア」

 

 そして人の大きな悲鳴も聞こえる。


「あれ、さっきの怪獣の逃げた方!」


 さっきのに襲われたか?とにかく助けに行かないと、たぶん俺なら勝てるかもだが普通に考えたらあんなの軍隊とかが戦う相手だ。


 とにかく全力疾走をして音の方に向かう。森の木を避けながら進むと大きな道に出た。


「いた!」


 そこには、馬車を壊すさっきの怪獣と10人くらいの甲冑を着た人たちが熊と対峙していた。後ろにはメイドみたいな人とドレス来た人が逃げようとしている。

 ドレスの女性と目が合う。さっさとやらなければ。瞬時にそう感じる。

 


「おらあああ」


 さっきよりももっと力を拳に込めて熊に殴りかかる。アドレナリンが出ているせいなのか、目を開けて殴ったからか、今回のパンチは前回とは違う、なにか完璧だと思えるくらいの感触があった。


 拳を食らった怪獣の頭は吹っ飛んでいた。


「おさらばだな、熊野郎」


 すごく気持ちがよかった。勝つってこんな感じなのか。いやそれより襲われてた人達だ。

 襲われていた人達を見ると呆然と立ち尽くしている。とりあえず怪我人はいないようだし一安心だが、この反応は俺の強さに驚いてる感じだろうか。

 とりあえず、無事だしこの人たちに色々聞くしかないか。そう思ってると綺麗なお嬢様が立ち上がりこちらに近づいてくる。


(見た目的に貴族とかか?テンプレで考えるならこの子に恩を売って面倒みてもらえるか?)


 異世界感がどんどん漂ってきて、これなら俺もそこそこ平和に主人公的な感じで暮らせるんじゃないのかなとかそんなことを思っていた。

 ぶっちゃけかなりワクワクしていた。だって俺完全にヒーローじゃん、これは勝ったと。全能感でいっぱいだった。


 その後言われることを除けば完璧だった。




 






「蜉ゥ縺代※縺上l縺ヲ縺ゅj縺後→縺??」






「?????????????????????」





「譌??譁ケ縺ァ縺励g縺?°?滓悽蠖薙↓縺ゅj縺後→縺?#縺悶>縺セ縺呻シ」






「?????????????????????」




 その日俺はすべてを手に入れられるとか思った。実際ほとんどは手に入るのかもしれない、チートがあるんだ。

 ただ一つ、言語だけは手に入らなかった。



(そこはチートに含めとけよ神様!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)




 


 その日俺は言語の通じない異世界に来てしまった。

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