誰も知らない世界の英雄
ダークネスソルト
No0・世界を救った英雄達
ラストダンジョン
世界の出現する全ての活性ダンジョンを攻略することによって初めて入場が可能となる最上位難易度を持つダンジョン。
最奥にいる邪神・デッドエンドを滅ぼすことにより、世界の全てのダンジョンを消滅という全人類が渇望してるであろう報酬を得ることが出来る。
そんな、ラストダンジョンはとある4人の英雄の手によってクリアされようとしていた。
ラスボスである邪神デットエンドは死ぬ寸前であり、それこそ後10分も放置すれば生命力が尽きて死ぬであろう。
もちろん、邪神・デッドエンドが弱いという訳ではない。ただ、ひたすらに4人の英雄が強すぎたのである。
彼らは彼女らは全員が世界を救うために善神・テミスから強力な固有スキルを邪神・デッドエンドを倒すまでの間のみ貸し与えられており、その固有スキルを活用しながらダンジョンが出現してから50年以上にも及ぶ研鑽を積み努力を重ねて文字通り四肢が捥げ、精神が狂うような環境に身を置いてきた。
そんな彼ら彼女らが弱い筈がなかった。
かくして、世界を滅ぼしたダンジョンは4人の英雄の手によって救われて、これから荒廃した世界だが、人間がまた希望を繋いで繁栄させていくのでした。
めでたしめでたし。
とはならなかった。
――――――――――――
「何とか、終わったな。ハアハアハア」
固有スキル・【勇者】を持った聖剣の使い手ユウヤは満身創痍になりながらそう呟く。
「そうだね・・・。これで世界は救われるんだよ」
固有スキル・【賢者】を持った大魔術師イトは魔力を使い切り、激しい頭痛にさいなまれながらもそう答える。
「ええ。そうね。そうだけど・・・。本当に世界を救ったと言えるのかな・・・」
固有スキル・【武天】を持った最強の格闘家カレンは全身に傷を負いながらもそう疑問を呈した。
英雄である3人は邪神・デッドエンドを討伐するにあたり、それぞれ一歩も動けない程に疲れ切っており何とか喋るくらいは出来るものの、邪神・デッドエンドにとどめとなる程の強力な一撃を放つのは難しい状態にあった。
といっても邪神・デッドエンドはもう後10分も放置すれば死ぬほどの重傷を負っており、自分の生命力等を代償にしてまで無理に邪神・デッドエンドにとどめを刺さなければならない程緊迫した状況でもなかった。
「そうだな。世界は滅びてるもんな。でも、まだ生き残ってる人はいる。皆で命を繋いでまたあの平和で豊かな世界にしていこうじゃないか」
「そうだね。うん。悲観的になっちゃ駄目だね。だって私達はこの世界を救ったんだから」
「ええ。そうね。私達は世界を救った。胸を張ってそういうわ。じゃないと、死んでしまった皆に申し訳ないもの」
「そうね。私達は皆の想いを受け継いでここにいるものね」
「ああ。そうだな」
3人の英雄はこれからの未来を考えて話をしていた。
ただ、いままで一人でとあることを考えていた一人の英雄が口を開いた。
「ユウヤ、イト、カレン。聞いてくれないか?」
「どうしたんだ。カイキ」
「俺は俺達は本当の意味で世界を救ったと言えるのか」
「何を言うんだ。カイキ。世界を救ったさ。俺達は世界を救ったんだよ。後10分いや8分もすれば邪神・デッドエンドは死ぬ。そしたら世界全てのダンジョンが消滅して魔物はもう二度と現れなくなる。これを世界を救ったと言わずになんという」
「そうだな。そうかもな。それでも、それでも、それでも、俺は諦めきれないんだよ。死んでいった皆のことが。俺達に希望を託すといって死んでいったアイツらのことがよう」
「その想いを希望を俺達は見事実現してみせたんだろ。邪神・デッドエンドをぶっ殺して世界を救った。これから、これから希望に満ち溢れた生活を送るんだろ」
「じゃあ、何でお前は今泣いてるんだよ。本当に希望を持ってんのか。本当にこれが最高のハッピーエンドか。違うだろ。これはビターエンドだ」
「じゃあ、どうするって言うんだよ」
「俺が、俺が死に戻って一人で邪神・デッドエンドを滅ぼす。全てが起きるあの大激変の前に全てを終わらして見せる」
「カイキ、でもそれって、途轍もない道じゃ・・・だって、邪神・デッドエンドを一人で倒す。いやそもそもこのラストダンジョンを一人で踏破するだけでもどれだけ危険で不可能に近いことか・・・その為にはどれだけの死に戻りの地獄を味わなければならないのか・・・」
「それは分からない。でも俺は何度だって死に戻りをしてやる。誰もが幸せになれる様な最高のハッピーエンドを求める為にさ」
「でも、待ってよ。カイ君。それカイ君が勝てない可能性はない。邪神・デッドエンドは到底一人で勝てるような相手じゃない。そんな相手に勝てるまで挑み続けるなんて、無限の生き地獄になるよう。それならこのまま私達と一緒に生きようよ」
「そうだぜ。カイキ。俺達はもう充分に頑張ったさ。お前の苦しみを全て分かるなんて言えないが、死に戻りの力で何万回という死を経験してきたお前がここから更に修羅の道を歩くのは間違ってる。もうこれで終わりにしよう。俺はお前にもう苦しんで欲しくない」
「ユウヤ、ナツキのことはいいのか?」
ナツキ、ユウヤの幼馴染であり最愛の妻であり、共に背中を預けるに足る剣の腕を持った剣豪であった。
しかし、ラストダンジョンに向かう少し前に避難所で生活していたとある親子を庇って魔物に殺されてしまった。
その時カイキはすぐに死に戻りをしようとしたが、運命の悪戯かラストダンジョンに行く前に死に戻り地点を更新してしまっていた為にどうしようもない覆せない運命となってしまっていた。
「それは・・・・・・」
「なあ、イト、カレン、俺が死に戻りして全てを救ったらまた俺のことを好きになってくれるか?二人共愛するなんて最低な宣言をしてしまう俺だけどいいか?」
「もちろんだよ。カイキ」
「ええ。私もまた貴方を好きになるわ」
「そうか。それを聞いて安心した」
「じゃあ、俺は死に戻るよ。死に戻りスキル・リスポーン地点リセット」
ピコン
死に戻り地点をリセットした場合、死に戻りスキルを獲得した最初の時点になりますがよろしいですか?
YES/NO
「YES」
ピコン
死に戻り地点がリセットされました。
「じゃあ、俺は行ってくるよ。皆また過去で」
「覚悟は決まってるようだな。また過去で。そしてありがとうカイキ。頑張れよ」
「私待ってるからね。昔の私を救ってね。そして一杯抱きしめて」
「私も待ってるから絶対に迎えに来てね。私の王子様」
「ああ。もちろんだ。じゃあな」
そして固有スキル・【死に戻り】を持った英雄カイキは自らの首を自殺剣で掻き切って死んだ。
ピコン
死に戻りします。
目が覚める。
目を開けると少し散らかっている部屋があり、ベットのすぐ隣には読みかけのライトノベルが置いてあった。
「ああ、そうか俺は死に戻りしたのか。こうしちゃいられない。計画を立てよう。まず今は何年何月の何日の何時だ」
久しぶりに机の上にあるスマホを触りながら日時を確認する。
「2023年の4月の5日、昼の12時か。確か、ダンジョンが出現するのは今から丁度12時間後の2023年4月の6日、昼の12時だったっけな?そっからあの地獄が始まるんだ。でも大丈夫だ。この24時間以内に俺は邪神・デッドエンドを倒せば世界を救うことが出来る。
よし完璧だ。まずはこれを目標としよう。さあて、皆待ってろよ。俺が絶対にこの世界を救って見せるからな」
―――――――――――――
補足説明
ライトノベルのお約束でめちゃくちゃに強くなってる主人公たちは50年経過しても外見そのまま、寿命という概念は半分くらい逸脱した存在になってます。
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