人物紹介:陽調
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【 担当:
命に続いてなぜか姉さんの紹介もすることになった悠心だ。誰に送るかは知らないが、八葵がうるさいからまあ満足するまで付き合おうと思う。
姉さんな。本名は
誕生日は7/17。なんと私の1日前だ。姉妹揃って夏生まれだな。だから家族でやる誕生日パーティーはいつもどっちかの日にまとめてやる感じだった。大学生になってもそのパーティーをする日は友達と遊ばず家にいるから、
姉さんは私の4つ上だ。大学生で、順調に単位を取ってて今は3回生。あんまり部屋を覗くことはないけど、たまに本を借りにいったら大体パソコンでレポートを書いてるな。思っているよりは忙しいのかもしれない。
姉さんは割と昔から姉さんで、冷静沈着でいつも微笑んで場を俯瞰して見る、形容しがたい余裕を感じる人だ。私が物心ついた時からこうだから、多分生来こういう雰囲気なんだろう。私と同じ本の虫だけど、姉さんが読むのは学術書とか論文とか、お勉強に興味がある人にはうってつけの本で、小説はあんまり読んでるところを見たことがない。でも有名な文豪の作品を話に出したらレスポンスをくれるから、名作はある程度網羅してるみたいだな。
姉さんは割と多趣味な人で、ソロキャンプしたり、バイカーだったり、観葉植物マニアだったり、さっき言ったが学術書とか論文の虫だったり、あと最近は家庭菜園に凝ってるな。多趣味だから1つの事象に関心が薄いかと言われるとそうじゃなくて、ちゃんと全ての趣味に時間を割って充てがって、満遍なく楽しんでる。趣味が増える事に1つが薄まっている様子を全然感じないのは、多分こういう時間の使い方をしているからだろうな。時間の効率的な使い方と自己理解に長けた器用な人って言えば分かりやすいな。
あと変な特技がたくさんある。自分に合わない枕と布団でも熟睡できたり、縦列駐車が完璧だったり、ビリヤードが死ぬほど上手かったり。この中には料理もあるんだが、姉さんの料理はひと味違う。有名どころの普通の料理はもちろんのことだが、なぜか家族の誰も知らない異国の料理を気まぐれで作ったりする。そしてそれが今のところ全部美味しくて、多分その国に赴いて現地で食べるより、姉さんが作ったものを食べたほうが満足できる気がする。でも多分それは私たち家族の舌に合わせてくれているからで、そういう変……変じゃないか。不思議な特技、器用さを持っている人なんだ。
姉さんの雰囲気には、さっきも言ったが形容しがたい余裕が含まれている。それも多分に。黒縁メガネのレンズの奥に潜むその含んだ目つきを『妖しい』って言う友達は少なくなかったらしい。私は別にそうは思わないんだが、参謀感が強いらしいな。高校生の時に遊びにいった文化祭の演劇では、
『ラスボスの物静かで優秀な右腕かと思ったら、終盤で裏切る裏ボス』
みたいな役をしてた。ちなみにめちゃくちゃハマり役で、姉さんそのままだったのに観客はザワついていた。そういう評価を楽しむ人だから、まあ特に問題はないな。その妖しげな雰囲気を多少緩和するためにいつもカチューシャを付けているんだが、あんまり効果はないそうだ。大体はメガネと目つきと佇まいのせいだから、そりゃカチューシャはあんまり意味ないな。
姉さんは私とはあんまり似てなくて、切れ長な目に高い鼻で、父さんにそっくりだ。私目線になるが、整った顔立ちだと思う。黒縁のオシャレかと言われればそうでもないメガネもオシャレに見えてしまうくらいには。背が高くてスタイルもいい。同じ秋月家の子供なのにここまで背が違うとちょっと悲しくなる。髪色と声のトーンはそっくりなんだがな。
髪は私と同じ赤毛で、私よりも短い。あんまり髪に執着がなくて、利便性と快適さを求めている短めにしているらしい。ロングにしてるところは見たことがないけど、多分あの顔立ちならショートのほうが似合うと思うな。まああの雰囲気でゆるふわロングにするのも面白そうだけどな。あんまり見ないタイプのお嬢様が完成しそうだ。いつかやってもらおうかな。
背が高くてショートヘアで声が低いから、割と男の人に間違われることが多いらしい……というか実際何回か私も直面した。一緒に外食したらカップル割を勧められるし、一緒に歩いてたらカップル特集のインタビュイーにされかけるし、私以外にも女友達が何回か同じ目に遭っているそうだ。姉さんは明確に異性愛者だから、変な勘違いをされかねないように、最近は深く帽子を被らなかったり、男性的なファッションをやめたり、お気に入りのパンツを露出の少ないスカートに変えたりしている。それでも男女問わず頻繁に告白をされるから、もうそういう人たらしフェロモンが出てるんだろうな。些細な振る舞いがイケメンだから仕方ない。
と、こんな感じか。総評になるが、いい人だぞ。悩みがある時はたっぷり夜通し聞いてくれる人だし、家庭的な一面も社会的な一面も整っていて、気さくで物知りで落ち着いていて、妹として参考にしないといけない点や線や面がたくさんある人だ。大っぴらにではないにしろ、妹である私を姉さんなりに可愛がってくれてる。私も何かを返していきたいな。
……よし、ちょうどいい尺だな。
録画を切って……。
──って姉さん、いたのか。
何? 最初から聞いてた? 悪趣味だな。
……そんなに褒めたつもりもないが。私の所感をペラペラ喋っただけだぞ。
あーもうなんだよ。頭撫でなくてもいいよ。眠たくなっちゃうだろ……。
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