第144話 湿地階層


"というか、ヒゲダルマがモンスターの戦闘でいろいろと考えているのはすげー意外だったw"

"普段はダッシュして首切って終わりだもんなw こうやって言語化してくれるとかなり勉強になる!"

"そりゃ、何も考えていない探索者だったらとっくに死んでいるってw これまでソロでやれていたのにはちゃんと理由があったんだな"


「さっきも言ったけれど、本気でダンジョンを攻略していた時はモンスターのことだけを考えていたからな。むしろモンスターについてはダンジョンで生き延びるために誰よりも考えていたかもしれないぞ」


 ここは51階層のゲート付近でモンスターが近寄ってこないため、この階層を探索する準備をしながら、高速で流れていくコメントのいくつかに応えていく。


 普段の配信ではそういった説明は面倒でしてこなかったけれど、今日はお世話になった那月さんたちがいる。俺なりにだができる限りしっかりと説明をしているつもりだ。


「よし、準備はオッケーだ。湿地型の階層は沼地で足を取られることが多いから、防水の長めの靴を用意しておいたぞ」


 大宮ダンジョンでも湿地型の階層はあったからな。草原や洞窟型の階層で特に大きな準備は必要ないけれど、深い階層になると火山帯や雪原の階層もある。


 それぞれあまり暑くない装備や防寒具など、その階層に合った装備を準備しなければならないのは面倒なところである。


"湿地とか火山のエリアとか、出現するモンスターはちゃんとそこに適応しているのはずるいよな……"

"沼地に深く沈まないように足ヒレがあったり、暑い火山だと毛皮の薄いモンスターとか、ダンジョンの生態系謎過ぎるだろw"

"そりゃ人間様に都合のいいようにはしてくれないだろうな。そのせいでいろんな地形に対応した防具が必要になって、探索者や配信者はお財布事情も大変なんだよ……"


 さすがにリスナーさんもダンジョンについて詳しいな。ダンジョンはモンスターの素材やマジックアイテムでお金を稼げるが、武器や防具にマジックアイテムなど出ていくお金も非常に多いのである。


 武器や防具をローンで購入して逆に破産するやつもいるくらいだからな。少なくとも借金やローンをしてまで購入するのは止めた方がいい。


 ダンジョンに関するものはいつもニコニコ現金払いか素材現物払いである。まあ、素材現物払いは俺くらいかもしれないけれど。


「ヒゲダルマさんは普段どんな風に探索をしているのですか?」


「基本的にはいつも左の方から総当たりでマッピングしていく感じだな。もしも山とか大きな建物とか目立つものがあれば、そっちを優先して探索していく感じだ」


 浅い階層では草原や沼地など開けたエリアには道があって、それに従っていけば次の階層へ繋がる青いゲートが見つかるが、20階層を超えるとそんな親切設計はなくなって、自分で道を探さなければならない。


 一応山エリアの山頂や古代遺跡エリアの塔みたいな目立つものがある場合は、そこに青いゲートのある可能性が高いため、優先してそちらを探索するようにしている。


「なるほど、探索方法は我々とほとんど同じですね。私たちはなんとなく右回りでしたが。今回は左回りで行きましょう」


「了解だ。その辺りはどっちでも関係ないだろうけれどな」


 どうやら那月さんたちも同じように探索をしているようだ。まあ、目印がない場合はしらみつぶしに探していくしか方法はないよな。ダンジョン研究者の研究では青いゲートの位置は一定の距離が離れた場所へランダムに配置されているらしいから、右でも左でも関係ない。


「さて、それじゃあ探索を始めよう」


 前回横浜ダンジョンを攻略した時は時間の関係もあって走りながら探索をしていたけれど、緊急時以外の探索はもちろん周囲を警戒しながら歩いておこなう。特に森や洞窟なんかは遮蔽物が多く、そこからモンスターが襲ってくる可能性もあるからだ。


 那月さんたちと一緒に歩いて沼地エリアを進んで行く。




「……よし、戦闘終了だな」


 目の前にいた巨大な鳥型の魔物であるスワンプバードの身体を両断した。


 やはり洞窟以外のエリアで空を飛ぶ魔物は厄介だ。しかもこのモンスターはその爪に毒を持っているからさらに面倒な相手である。とはいえ、このくらいの階層のモンスターの毒なら俺には問題ない。


 それにダンジョンの中のモンスターは逃げるという行動をほとんど取らないから、いずれ襲ってくるところにこちらの攻撃を合わせればいい。面倒なのは空を飛んでいるだけあって、視界外へ消えると次の行動が予測しにくいので、他のモンスターと一緒に来られるとさらに厄介さが増す。


「しかし本当にとんでもねえな……」


「まったくだよ。確かにこれならこの階層でも余裕な訳だよね」


「いや、さすがに今は深い階層を攻略して身体能力がだいぶ強化されているから問題ないけれど、俺が50階層くらいを攻略していた時に4~5体で囲まれていたらかなり怖かったよ。やっぱり一緒に探索するパーティメンバーがいるというのはいいな」


「え、ええ。本当はそれが普通なのですが……」


"金色の黄昏団のリーダーがドン引きしていてワロタw"

"やっぱりヒゲダルマがおかしいだけで、ワイ将の感覚がおかしいわけじゃなかったんだよね! 普通は背中を守ってくれる仲間がいないと4~5体は無理ぽw"

"この階層にソロで潜れる時点で普通じゃないんだよね、これが!"




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