第13話 細かすぎるとモテない?

 桜さんの友達の五十嵐さんと店で会った。彼女は旦那さんとあまりHできておらず、ようだ。


バイト先に男は俺1人。不安はあるが、楽しみというか興味があるのも否めない。今まで求められた経験がないんだ。いざとなったらどうなってしまうか…?



 その日の夜。自室にいる時に桜さんから携帯に連絡が来た。


『桃子にはきちんと説明したから、後は実務になるわ。本来明日はわたしと健一君のシフトだけど、経験を積ませるために桃子に来てもらうから』


そうなると桜さんの手が空くが、彼女が暇になる事はないだろう。


早速『わかりました』と返信した。業務連絡だし最低限で良いよな。


さて、趣味の時間に戻るとしよう…。



 翌日。今日は遅番なので、ランチタイムより少し早めの10時40分頃に店に着いた。お客さんはいないが、キッチンに桜さんと五十嵐さんがいた。


「おはよう、健一君」

俺に向かって微笑んでくれる桜さん。


「おはようございます」


「桜。10時台に“おはよう”は変じゃない?」

彼女の隣にいる五十嵐さんがツッコむ。


「でも“こんにちは”にしては早い気がするし…」


「どちらでも良いのでは? 俺は気にしませんよ?」

挨拶は、する事に意味があるよな。


「みんなが健君みたいだったら良いけど、気にする人はするんだよ。細かすぎるのはモテないのにさ~」


「五十嵐さん、そういう経験があるんですか?」

愚痴ってるように見えたからだ。


「1回だけね。新卒の時、見るからにモテなさそうなデブ上司に“ご苦労様”って言っちゃった事があるのよ。『“お疲れ様”だろうが!!』 ってムカつく顔でキレられたわ~」


「桃子。それは一般常識の範囲でしょ…」

呆れる桜さん。


「近くに誰もいなかったんだよ? 聞き流せば済む話じゃん」


「じゃあ、あんたの言い方が気に食わなかったのよ」


「アタシのせいなの? 器が小さいのが悪いと思うけどな~」


同年代かつ同性だからか、桜さんと五十嵐さんの話は弾んでいる。今の俺には決して真似できないから羨ましいよ。



 「…忘れるところだったわ。健一君、昨日伝えた通り今日のランチタイムは桃子と一緒にお願いね」


ハッとしてから、俺に向かって話す桜さん。


「はい」


「わたしはコッソリ2人を見守るからよろしくね」


「見守るってどこで?」


五十嵐さんが尋ねる。それは俺も気になるぞ。


「そばにいたら邪魔だろうし、休憩室前にいるわ」


「わかりました」


キッチンは店の中央付近にあり、休憩室はキッチンの隣だ。そこにいれば邪魔にならないな。


「健一君が着替え終わったら、わたしは移動するからね」


「了解です」


…何故か五十嵐さんがニヤついたが、気にせず休憩室に入る事にした。

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