第20話(アイシャ視点)

「はぁ……」


 アタシは昨日からため息ばかりついていた。はぁ、全くもってつまんないわぁ……。


―― 人間が魔王城に攻めて来た!


 そのような一報がナイン全域に住む魔族達に届いた。この報告を受けて魔族達に激震が走る……という事は一切無かった。


 何故なら魔王城に攻めて来た人間達は、魔王様の力によって一瞬で敗北したからだ。 アタシが魔王城に着く前に既にその襲撃事件は終わってしまったのだ。


「はぁ、まったくさぁ……せっかく襲いに来たんだったら、もっと根性みせろっての」


 アタシは人間達による襲撃の報告を受けて“ふーん、人間もやるじゃん” って思ったのにさぁ……まさか一日もかからずに敗北を喫するなんて情けないよ、はぁ。


 そんで、その後の様子を聞いてみたんだけど、どうやら生き延びた人間の兵士たちは自分達の拠点であるゴア地方の都市に逃げ帰ってるらしい。


 んで、魔族側はその逃げ帰っている人間達を叩くために追いかけていってる最中らしく、今はナインとゴアを繋いでいる街道で争いが続いていた。


 それと、その街道戦の騒乱に乗じて、その周辺の村に住んでいる人間達も今がチャンスだと言う事で一斉に逃げているらしい。


 そのおかげで今ナインとゴアを繋いでいるあの街道には多くの逃げる人間達でいっぱいになっていた。


 今の状況はまぁそんな感じだ。ちなみにアタシも魔王軍から命令を受けて、ナインからゴアへ逃げていく奴らを狩りに向かったんだけど……はぁ。


「久々に暴れられると思ったのになぁ……」


 つい先ほどまでアタシは敗走する人間達をアタシは襲ってきた。でも手負いの相手や戦う気のない村人ばかりで手ごたえなんて一切無かった。


 しかも兵士たちは戦う気が一切無くなっているようで、武器を捨てて逃げだす者達ばかりだった。


 そんな光景を見たアタシは何だか段々とムカついてきたので、アタシは兵士ではなく、逃げる女子供達を率先して殺していった。アタシは逃げていく女子供達の首元に目掛けてアタシの尻尾を巻きつけていき、そしてそのまま優しくほんの少しずつ締め付けてあげていった。


―― やだ……死にだくな……ぐぼっ……

―― く、るし……たす、け……ぁっ……

―― おか、あ、さ……ぉ゛ほ゛っ゛……


 ふふ、今思い出しても最高の光景だったなぁ。彼女たちを締めあげていくとさぁ……色々な穴からぴゅっぴゅっと自分の体液を可愛らしく出していくんだよねぇ、あはは! それが本当に本当に可愛らしくてもう一生見てられたわぁ。


「まぁ一生っていってもすぐに死んじゃうんだけどね、あははっ」


 いや本当にその姿が可愛かったかったからさぁ、逃げていく兵士たちにも色々な穴から体液をぴゅっぴゅっと出してる女子供達を見せてあげたんだよね。


 でもそうするとさぁ、人間って弱い者を守ろうとする習性があるらしくてさ、なんかいきなり逆上してきて、アタシを倒そうとしてくる奴が沢山現れたんだよね。


 まぁでも強いやつは一人もいなかったから全員殺したんだけどさ、あはは。 マジで最後までカスみたいな弱い人間しかいなくて腹立たしかったんだけどさ、ふふ、でも最後に収穫はちゃんとあったんだ。


「……ふふ、綺麗な首飾り……」


 アタシは先ほどの街道戦で手に入れた首飾りを掲げながらうっとりと眺めた。首飾りの中心部には青色に輝く宝石が埋め込まれていた。


「これはいいねぇ……凄い綺麗な色だねぇ……」


 それは先ほど殺した男が身に着けていた首飾りだった。とても綺麗で素敵な首飾りだったので、アタシはその男の首をねじり切って首飾りを貰う事に成功したんだ。でも、その首飾りには男の血がベッタリと付いてしまっていた。


「……はぁ、死ぬならアタシに迷惑かけずに死ねよなぁ。まったくさぁ、テメェの汚ねぇ血なんかでアタシの綺麗な宝石を汚すんじゃねぇよなぁ……ま、殺したのアタシだけどさぁ、あははっ」


 という事でアタシはケラケラと笑いながら、その首飾りに付いた血を洗い流すために森の中に流れている川にまで来たのだ。


◇◇◇◇


 今から数時間前。


 アタシは魔王軍の命令を受けて、ナインからゴアへと繋がっている街道で人間達を狩っていた。


 戦況としては魔族達もそれなりに集結はしていたんだけど、でも人間の方が数は圧倒的に多かった。


 しかしそれは近くの村から逃げだしてる人間が多かったためなので、魔族側の方が数が少ないといっても戦力差で言えば圧倒的に魔族側に軍配が上がっていた。


「さて、と……どーしよっかなぁ……」


 アタシはその戦場を俯瞰的に眺めながらそう呟いた。当然人間達は大半が逃げる奴らばかりなのだが、でもアタシ達はそれは追わない。何故ならそれが魔王様の命令だったからだ。


「我々の脅威を他の人間に知らせるためにも、逃げていく者は伝聞役として“それなりに”生かしておけ」

「ふーん? でもそれなりってぇ……どれくらい生かせばいいんですかねぇ……?」

「裁量はお前達に委ねる。だたし歯向かってくる者達には容赦しなくてよい、鏖殺していけ」

「ふふ、了解しましたぁ……」


 そんな命令を魔王様から貰ったので、アタシはそれに従ってこちらに武器を向けて来た人間達を片っ端から殺して回っていた。


 最初はアタシに反撃する者もそれなりにいたんだけど、でも次第に武器を捨てて逃げていく人間が増えていった。


 その内アタシに攻撃する者がいなくなったので、アタシはイライラが募ってきた。こっちは強い奴と戦いたくてうずうずしてるってのにさ、アイツら皆戦闘放棄して逃げるんだもん。マジでムカつくよね?


 でさ、その時にちょうど近くから逃げきてきた村人が集団で現れたからさぁ……ふふ、アタシはそのストレスを解消するためだけにそこにいた女子供だけを狙って惨たらしく殺していったんだ。


 女子供を惨たらしく殺すと人間達は怒り狂った顔をしてくれるからとても楽しいんだよねぇ、あはは。


 そしてそんなアタシが遊んでる光景を見た人間達はアタシを止めるために逃げるのを止めて再び攻撃をしかけてくれるようになってくれたんだ。アタシはその状況を喜びながら攻撃をしかけてきた人間を全員と対峙していく事にした。

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