第13話 ある呪文「接続詞」

うん。つまりはあなたは精神と物質的な世界は別であり、リアルとフィクションは無関係だと。そう言いたいんですね?結構。


ところで地球が生まれてから今日まで。およそ48億年。この辺りだけでも随分変わったのでは?森や荒れ地は開発が進み人の手が入ることで舗装された道路や建物に代わりました。この事から、人が物質的世界に影響してきたことは明らかですね。


更に、人間の肉体と精神は互いに影響し合っています。これも、現代の科学的見地からしても明らかでしょう。精神は肉体に作用し、肉体は精神に作用する。自明ですね。


するとどうでしょう?精神は人に作用する→人は物質世界に作用する。三段論法により精神は物質に作用する、という結論が導けます。


聡明な貴方なら御気づきでしょうが、人の精神に影響を与える、人の精神活動。これが魔法や呪法の正体です。人に影響することで、世界に影響を及ぼす。他人の考えなど理解出来るものではありませんが、心でもって人の心を動かすこと。これこそが人に赦された奇跡なのですよ。


相手を慮る心は尊重され、思念と技術を込めた作品は人の心を動かします。


火を起こしたくば、呪文を唱えマナーだのオドだのを用いなくても、ライターや火炎放射器を使えば良いのです。現象の理解、着想、発想、設計、加工という工程をあなたは無視して、火を起こすという結果に辿り着く。魔法そのものじゃないですか?ライターを作って売買を行おう!という意思がライターを使った人に火が起こせて助かったという意思を導くということです。


これは文化人類学で言うところの「贈与」の役割を、人間の精神的領域において担っていると言えるでしょう。


歴史の文化的遺産の堆積。こういったものをミクロ的視点で眺めると、案外当たり前の光景、何気無いやり取りが広がっているのかもしれません。バベルの塔は未来に向けて今も我々を乗せてそびえ立っているのです。


魔法と呪法の違い?読んで字のごとく!以上!


──そして、今私が話したこともきっといつか何処かで誰かに、魔法をかけてくれるんじゃないかと。そう期待しています。

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