【実話短編】雷の鳴るころ

天城らん

第1話 雷が好きな私

 私は雷が好きだ。



 闇の中、青白く、時に紫色にも見える閃光。


 空を割るように駆ける稲光いなびかり


 大地を揺らす雷鳴。

 

 真夏の雷の盛んな時期になると、私は暗いマンションの一室で、山に落ちる幾筋もの雷の競演を飽きるまで堪能する。

 女性なのに『キャー』とも『怖い』とも反応しない私は、少し変わっているとも言える。

 


 一方、2歳年下の妹は違う。


 小さな遠雷の音が聞こえただけで悲鳴を上げて震えあがり、カーテンを閉め、音も光もなるべく見ないようにする。


 それは、大人になった今でもそう変わらない。

 

 両極端な反応をする私たちだが、元は幼いときに経験した、ひとつの共通した出来事がゆえのことだった。

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