第2話
ある土曜日の午後、ユミは家の倉庫で時間を過ごしていた。彼女は古い物が好きで、時々、埃まみれの品々の中に隠れた宝物を探す。倉庫の隅にある箱を探索していると、彼女の目に飛び込んできたのは、古くて大きな鏡だった。
「これは何だろう?」ユミは興味津々で鏡に近づく。鏡は複雑な装飾が施されており、その存在感は圧倒的だった。彼女はそっと手を伸ばし、鏡の表面をなぞると冷たく滑らかな感触が指先に伝わる。
鏡のフレームには不思議な模様が刻まれていて、ユミの好奇心を一層かき立てた。「おじいちゃんのコレクションかな?」彼女は独り言をつぶやきながら、鏡に映る自分の姿を見つめる。その瞬間、鏡の中が不自然にぼんやりと動き始めたように見えた。
ユミの心はわくわくと高鳴り、彼女は鏡を自室に持ち帰ることを決意した。大きな鏡を苦労して自室に運び入れる。鏡を部屋に置くと、その神秘的な雰囲気が部屋全体を包み込んだ。
その夜、ユミは鏡の前に座り、その不思議な魅力に思いをはせた。彼女の心は、新たな冒険への期待でいっぱいになる。鏡の中の世界が、彼女に未知の体験を約束しているように感じられた。
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ユミは自室の鏡の前に立ち、緊張と期待で心が躍る。彼女は深呼吸をして、鏡に向かって「さあ、見せてごらん」とつぶやく。その言葉が部屋に響くと、鏡の表面がゆっくりと動き始めた。
鏡の中では、まるで別の世界が広がっていた。ユミは驚愕し、目を疑う。そこには、色とりどりの光が舞い、未知の風景が現れていた。彼女は鏡に手を伸ばし、その冷たい表面に触れた。触れると、鏡はさらに鮮やかな光景を映し出す。
「本当に……異世界……?」ユミの声は震え、彼女の目は大きく開かれた。鏡に映る景色は次々と変わり、森林、山脈、そして幻想的な都市へと移り変わる。ユミはその美しさに息を呑み、鏡をまじまじと見つめた。
彼女の心は興奮でいっぱいになり、自分の部屋にいながらにして異世界を体験しているという感覚に圧倒される。ユミは「信じられない――」と繰り返し、鏡の不思議な力に完全に魅了されていく。
鏡の中の世界は、ユミの想像を遥かに超えるものだった。彼女はその場に座り込み、鏡に映る幻想的な景色に見入る。夜が更けるにつれ、ユミは新たな発見の喜びと共に、未知への探求心を深めていった。
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夜毎に、ユミは鏡の前に座り、異世界への探索を続けていく。彼女の部屋は暗く、唯一の光源は鏡から放たれる幻想的な光だけだった。その光は、ユミの好奇心を刺激し、彼女を異なる世界へと誘う。
「今日はどんな世界が待っているのかな?」ユミはわくわくしながら鏡に手を伸ばし、その表面を優しく撫でた。鏡は反応し、新たな景色を映し出し始める。今夜は、輝く星々に囲まれた宇宙の世界が現れた。
ユミはその美しさに圧倒され、息をのむ。「こんな場所があるなんて……」彼女はつぶやき、星々の間を縫うように動く宇宙船を見つめる。その宇宙船は、彼女の想像を絶する技術で動いているようだった。
次に、鏡は深い森の中を映し出す。森は神秘的で、鮮やかな色の花々が咲いている。鏡の中自分はその森を楽しそうに歩いている。
鏡の中の世界は、ユミにとって無限の可能性と発見の連続だった。彼女は毎晩、鏡に映る異世界に心を奪われ、自分の現実とは異なる生活を夢見る。この不思議な鏡は、ユミにとって最高の宝物となっていた。
夜が更けるにつれ、ユミはゆっくりと現実へと戻る。しかし、彼女の心はまだ鏡の中の世界に留まっていた。ユミは眠りにつく前、「また明日も新しい世界を見よう」と心に誓い、静かに目を閉じた。
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日々、鏡の中の世界を探索するうちに、ユミの中に疑問が芽生え始めた。ある晩、彼女は鏡の前に座り、考え込む。「この鏡は一体、どこから来たの?」
ユミは鏡のフレームを詳しく調べ始めた。鏡の裏側には、刻まれた文字やシンボルがあり、ユミはそれらをメモし、その意味を解読しようと努力した。「これは何かの手がかりかもしれない」と、彼女は興奮を抑えきれずにいた。
翌日、ユミは学校の図書館で鏡についての調査を始めた。彼女は古い文献や神話の本をめくり、鏡に関連する情報を探す。アヤが彼女のそばにやってきて、「何を調べてるの?」と尋ねた。
ユミは少し躊躇しながらも、「古い鏡のことなんだけど、不思議なんだよね」と答えた。アヤは興味を持ち、「面白そう!手伝おうか?」と提案したが、ユミは「大丈夫、ちょっとしたことだから」と微笑みながら断った。
その夜、ユミは更に深く鏡の秘密に没頭した。彼女はノートにメモを取り、インターネットで追加の情報を検索する。鏡の起源やその力について。
「この鏡はただの鏡じゃない。もっと大きな意味があるはず……」ユミは独り言をつぶやきながら、その謎を解き明かすことに夢中になっていた。
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学校の昼休み、ユミはアヤと一緒に校庭のベンチに座っている。アヤはユミが最近何かに夢中になっていることに気づいており、好奇心を隠せなかった。「ユミ、最近何か面白いことでもあったの?」アヤは軽く肘を突きながら尋ねた。
ユミは一瞬ためらいながらも、「うーん、ちょっとね」と曖昧に答える。彼女は鏡の秘密を誰にも話していなかった。その秘密は彼女にとって特別なもので、簡単には共有できない。
アヤはユミの表情を見て、何かを隠していると感じた。「ねえ、何か心配事でもあるの? 何でも話していいんだよ」と優しく言う。ユミは微笑みながら、「大丈夫、ただの趣味みたいなものだよ」と答えた。
昼休みが終わると、二人は教室に戻る。ユミの心は再び鏡の世界に飛んでいく。彼女はアヤに感謝していたが、同時にこの秘密を守ることの重要性も感じていた。
授業中も、ユミは鏡の謎について考え続ける。ノートに隠されたシンボルや模様を描き、その意味を解読しようと努めた。彼女は思う。この鏡はただの物体ではなく、新たな世界への扉のはず。
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ユミは自室の鏡の前で夢見る時間が増えるにつれ、現実の世界とのギャップに苛立ちを感じ始める。ある夜、彼女は鏡に映る自分の姿をじっと見つめながら、現実世界のほうが間違っているように感じていた。
「なぜ現実はこんなにも退屈なの?」彼女は鏡に問いかける。鏡の中の世界では、彼女は自由で、冒険が待っていた。しかし現実では、彼女はただの学生で、日常は繰り返し。
次の日、学校でアヤがユミに声をかけた。「最近、元気ないね。大丈夫?」アヤの心配する声がユミの耳に届いた。鏡の調査に進展はなくユミは落ち込んでいたが「うん、大丈夫だよ」と答える。彼女の心はまだ鏡の世界に留まっていた。
授業中も、ユミの心は常に鏡の中の世界を思い描く。教師の声やクラスメイトの話し声は、彼女には遠く感じられる。ユミは机の下で手を握りしめ、現実からの脱出を切望していた。
放課後、ユミは一人で家に帰り、再び鏡の前に座る。鏡に映る異なる世界に心を奪われ、現実の自分との間で
ユミは深くため息をつき、「現実よりもここがいい」とつぶやいた。鏡の中の世界は、彼女に安らぎと興奮を与えてくれる。ユミはその夜も、現実世界と鏡の世界の間で揺れ動きながら、眠りについた。彼女の心は、鏡の中の幻想的な世界にどんどんと引き込まれていく。
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