第76話 所詮、転生組ですから
ふと、何かの明るさをまぶたの外の感じ目を覚ました
私の周囲は暗闇だったけれど、明るい方へ目を向けると、見覚えのある部屋だった。
籠の中には暖かそうな毛布が敷き詰められ、中には素晴らしく美しい赤ん坊とその周囲にチラホラと飛び回る妖精達。
おっさんの顔も、その兄弟も、カリンおばちゃんとその姉妹だろう小さな妖精達がいて、みんな笑顔だった。
おっさんが籠の縁に立ち、
「親愛なるリリアン・ローズデール伯爵令嬢、美しく、多大魔力を所持し、偉大なる魔術師、さらに聖女にも選ばれしその器の誕生を心からお祝い申し、我ら妖精王の加護を与える」
と言った瞬間、ぱーっと明るく赤ん坊が光を発し、そして笑った。
一点の曇りもなく、その笑顔だけでこの世の平和を象徴しているようなそんな神々しい赤ん坊だった。
リリアンは凄い赤ん坊で、皆に祝福されて生まれたんだなー、と思った瞬間、場面が変わった。
ベッドの中で咳をし、顔が赤いリリアン。少し成長して五歳くらいだろうか。
弱々しく、生気を感じられない痩せ細った身体。
そっかー、身体が弱かったっけな。
「全く、魔法も発現しない、身体は弱い! 何の為に生まれたきたのかしら!」
枕元で毒々しく吐き捨てる母親に、
「ごめんなさい、お母様」
と涙目のリリアンが小さい声で言った。
ずっとこんな風に言われてたら、そりゃ才能も開花しないよなー。
とりあえず次に会ったらこの母親しばく。
その後も何度か場面が変わったが、ろくでなしの兄にいじめられてるとか、父親に無視されてるとか、屋敷の使用人にさえも意地悪されたり、そのたびにおっさん達が庇うんだけど、リリアンには妖精王の言葉は届かず、妖精王を信じられないリリアンにはだんだんおっさん達の姿さえ見えなくなっていった。
「気力がない、立ち向かう勇気がない。そやから、精神が病んでいく。身体も動けんくなる。食欲もないから身体も回復せん。身体を動かさんから、ますます弱っていく、の悪循環。せめて強い気持ち、負けへんって気持ちが少しでもあったらな」
「何もかも信じられへんこの子には自分に魔力があるってことすら恐ろしくて信じられへんのやろな。使われへん魔力は枯れていくばかりや。せっかく妖精王から祝福を受けた数少ない人間やのになぁ」
(でも今は違うでしょう? 私は学びました。魔力も感じるし、魔法の使い方も覚えた。王都に戻れば聖女として国の為に力を尽くしますわ)
と声がした。
「そこまで回復したのはりりちゃんのおかげやろ?」
(ええ、そうね、どこから来たのか知らないけど、感謝してますわ。私に足りなかったのは、何ていうのかしら……図太い神経? ですものね。私は繊細すぎて、人間の悪意に耐えられなかった……でも、あの方の図太い神経のおかげでずいぶんと逞しくなりましたわ。ダゴン様もそうお思いになるでしょう? でも所詮あの方は野の人ですわ)
ずいぶんと失礼な言葉を言ってのけたリリアンだけど、まあ、確かに。
庶民とか貴族の前に生きてた次元が違うもんで、貴族がどうあるべきなんて知らないから、付け焼き刃の令嬢だったのはしょうが無い。
「確かに大半の貴族ってのは今のあんたみたいな感じや。あんたの方が貴族っぽい」
とおっさんが言い、横からアラクネの声もした。
「確かに~リリちゃんって凄いんだけど、威厳とかないもんね」
む、失敬なやつらだわ。
(私の成すべき事は理解していますわ。我が国の為に一刻も早く、侯爵様を王都へお連れする事ですわ。私はその為に自分が正しいと思う事をやりますわ)
ふふっとリリアンが笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます