第4話 禁欲生活 三週間目〜一ヶ月目経由、六週間目くらい

 世の中に上手い話なんて無いんですよ。

 何か良いことがあったら何か悪いことが反動で起きるんです。「世にも奇妙な物語」も、主人公は最初よくて調子乗って、結局最後はダメェってなるもんだす。


 作用があれば、反作用があるんです。


 禁欲十四日目以降、三週間目くらいからでした。

 アタイは度々、憂鬱な気分になるようになったのです。それも結構重い。(重度って言っても本当のうつ病患者の方からしたら、果てしなく軽度です)

 どれくらいかと言うと朝井リョウの小説に出てくるキャラがキラキラし過ぎてて、「うわああああああ!」となって本が読めなくなるくらいです。で、将来への漠然とした不安。


 で、一日だけ「これはマジで一回、病院行こうかなぁ」と迷うほどに落ち込んだ。

 厳密に言うとずっと落ち込んでるわけじゃなくて、なんか数日に一日くらいそう言う日が来るんです。超高速生理みたいな感じの周期で。

 なんだろ、FXでレバレッジかけてるから、上がる時の儲けも増えるけど、下がった時の損失も増えるみたいな感じ? 

 で、人生でこんなに落ち込んだ事なかったから「なんだこれ?」って禁欲系のYouTubeとかブログとか調べたら「停滞期」って言葉が出てきた。


 停滞期ってのは禁欲二週間目から二ヶ月くらいの間に起きる「禁欲の効果が停滞する時期」のことだそうです。これに入ると気分が憂鬱になったり、ちょっと体調が悪くなったりする時期らしいです。


 原因は不明。なぜなら禁欲自体に科学的根拠がないから。


 アタイの勝手な予想だと、多分、本能が「コイツ、命令しても全然子孫繁栄する気ねぇぞ」ってなって、で、押してダメなら引いてやれの精神で、ムラムラではなく逆に気分が落ち込む方向にシフトしたからではないかと思った。


 で、大体の禁欲を挫折する人は、この停滞期のしんどさに耐えれず、「もういいか」と自分に言い聞かせて、禁欲を辞めてしまうらしい。今まではムラムラだけだったのが、ムラムラとメンタルの落ち込みが交互に誘惑してくるわけですから。ご愁傷様ですとしか言いようがない。


 アタイは三週間目から一ヶ月目の間で、この停滞期に捕まり、精神的にしんどい事が多かった。


 ただ、そんなメンタルとは裏腹に、行動力は相変わらずで徐々に上がって行ってたんですよね。ここは本能さんもアタイも「行動力が上がるのはキュンです」で意見が一致しているわけです。

 もう、何かやる事あったら、すぐにやらないと気が済まない感じ。後回しにしがちな事務作業とかはこの頃に全部終わらせた。

 別にバルサンを焚いてるわけでもないのに「とにかく家に居たくない」ので、ずっと外に出て行く理由を探したりとか。禁欲前の家にいる理由を探し続けていたアタイならあり得ないです。

 気分は憂鬱なのに、やたら行動力があるのが、この辺。何故か、何の前触れもなく歯医者の予約をして歯石取りに行ったりしてた時期。


 最後にこの頃の体の変化だと、おでこのシワが消えた。

 これも化粧水なのか禁欲なのか、はたまたパオのおかげなのかは不明。(パオについて知りたい人はググってね)

 それと顔の脂っぽさが無くなったので、今まで使っていた洗顔料だと顔が痛くなるから、優しいやつに変えました。


 禁欲すると顔の脂は全然出なくなりますし、汗臭さとかも減ります。あと髭が伸びるスピードがどんどん遅くなっていきます。

 これはテストステロンの働きが影響してるらしい。でもテストステロンのいい部分ではなく、むしろ闇の部分です。

 テストステロンって男性が射精をした後、「完結」にならず、OVAでジヒドロテストステロンって言う物質に変わるらしいんです。


 で、このジヒドロテストステロンってのは何かというと「ブ男の原料になる成分」です。

 テストステロンが高倉健を作る物質なら、ジヒドロテストステロンはキモオタ製造機です。


 具体的に言うと、テストステロンは男性の力を高めるモテホルモンです。

 要するに肌がキレイになったり、行動力が上がる、筋肉がつく、髭は薄くなる、髪の毛がシャキッとする、毛穴が閉じて脂ギッシュじゃなくなる。女にモテるようになる為に体が変化する効果がある物質です。

 日本人男性全員のこの数値が高まると資生堂は潰れます。


 あと、女性はこのテストステロンの値が高い男性を無意識に判別できると言われてます。これが俗に言うフェロモンってやつです。


 逆にジヒドロテストステロンと言うのは、テストステロンが進撃の巨人のエレンくらいに、完全に闇落ちした姿がジヒドロテストステロンです。

 要は肌が脂ギッシュになる、行動力がなくなる、体が貧弱になる、髭が濃くなる、ハゲる、体臭が臭くなる。うっかり射精をしたばかりに、花を愛し小鳥と歌った、あのテストステロンとの思い出は、もう戻ってこないのです。


 つまり、男は無闇に射精しまくると、どんどんキモメンになっていくのです。

 

 しかし、一昔前まではハゲた髭の濃い男ってのはアメリカではセクシーな男の証明だったらしいです。なぜならポルノがないから、射精は女性とのそう言う時にしかできなかったからです。だから、ハゲとかはダンディだったわけです。


 で、これが一変したのはポルノ動画です。

 世の男たちはポルノ動画を見て、生身の女性ではない相手で射精をしてどんどんジヒドロテストステロンを体内に生成して、キモメンになっているわけです。


 で、禁欲したのでアタイの体からジヒドロテストステロンが消えて、そういう影響がなくなって来たってわけです。


 これが六週間目までの変化ですかね。


 アタイが禁欲してた期間は二ヶ月なんで、アタイ合計で九週間だったんだけど。

 一般的に一番最初に説明したドーパミンによってバカになったドーパミン受容体が元に戻るのには六週間から二ヶ月の期間が必要と言われている。(だから二ヶ月って目標でアタイは禁欲をやった)

 なので、この辺りからアタイの脳はドーパミンデトックスされ出した事になる。一応、最低限のノルマは達成した。よく頑張った。












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