第385話 クリスマスプレゼント


 「ふむん。喜んでくれてるな」


 「やっぱりうちの子は天才ね。ええ、間違いないわ」


 12月24日。

 クリスマスイブと呼ばれる日。


 俺と梓は太陽君とロイとレオが遊んでるのを優しく見守る。


 はいはいを覚えた太陽君の行動範囲は凄まじい。あっちに行ったりこっちに行ったり。それでいて、急に電池が切れたようにその場でスヤスヤと眠り始める。


 床で寝るのはダメだろうと、俺達がベッドに移動させようとするとギャン泣き。俺はこの場所で寝るんだいと、強い意思表示を見せてくる。


 仕方なくその場に転がしてあげると、それで良いとばかりにすぐに泣き止んでまたスヤスヤ。


 仕方なく、今はリビングのほとんどの場所にふかふかの絨毯を敷いて、少しでも負担をなくしてあげるようにしてるくらいだ。


 で、今はロイとレオにクリスマスプレゼントとしてあげたおもちゃで、一人と二匹が仲睦まじく遊んでるいる。


 ロイにはゴムボールを投げて、それを拾ってきたら太陽君がまた投げて。それを拾っての繰り返し。遠い距離には投げられないが、ロイは満足そうである。


 レオとはねこじゃらしみたいなおもちゃを振り回して大格闘。それはもうぶんぶん振り回して、レオを手玉にとってる。


 珍しく梓が親バカを発動するくらいに、一人と二匹で賢く遊んでるのだ。


 まあ、俺もスマホとカメラの二刀流で写真をパシャパシャしまくってるんたが。同じく宇良さんも、母親ーズときゃーきゃー言いながら写真を撮ってる。


 さっきも言ったが、今日はクリスマスイブ。

 夜には去年出来なかった、クリスマス歌配信をやる予定で、宇良さんは当然のように手伝ってくれてるが、デートとかはしないのかな。


 ほら、巴さんとか巴さんとか巴さんとか。


 他所様の恋愛事情には相談されない限り首を突っ込まないようにしてるが、流石にこれだけ長く一緒に居ると、どうしても気になっちゃうよね。


 でも前は、付き合いたいとか、結婚したいとか、そういう願望が今の所ないって言ってたしなぁ。やっぱり首を突っ込まないのが正解なんだろう。


 相性が良さそうに見える二人にくっ付いて欲しいって、思うのは俺のエゴでしかないからね。俺はサッカー選手じゃないから、こんなところでエゴを出してはいけないのだ。


 「……ことー」


 「むっ!?」


 「え!?」


 俺がそんな馬鹿みたいな事を考えてる時だった。ロイとレオと遊んでいた太陽君が、はいはいで宇良さんの元に向かって、ロイのボールを渡す。


 それは良い。

 良いんだが、渡す時になんて言った?

 俺の聞き間違いじゃなかったら『ことー』って。つまり、宇良さんの名前を言ったように聞こえたんだが?


 「う、薄々予想はしてたが…」


 「琴乃に掻っ攫われたわ…」


 太陽君の初めてのお言葉レース。

 ここ最近はそろそろだろうと、毎日のように俺や梓、母親ーズが刷り込みをしてたんだが……。


 どうやら、宇良さんが映えある太陽君初めてのお言葉頂いたで賞を獲得したみたいです。


 宇良さんは嬉しそうにしてるものの、俺達の方を見て申し訳なさそうにもしている。その心遣いがなんとも痛い…。


 ただ、太陽君の躍進はそれでは終わらなかった。


 宇良さんにボールを渡して満足したのか、人を殺せるんじゃないかと思える程のエンジェルスマイルを見せてから、俺達の方へ高速ハイハイ。


 「ぱーぱ」


 「はうっ!」


 太陽君がこれまた素晴らしい笑顔で、俺にレオのおもちゃを渡す。心を射抜かれた俺は、胸を抑えながらもおもちゃを受け取る。


 「まーま」


 「可愛い!」


 そのまま梓に手を伸ばして、抱っこを要求。梓は俺じゃなきゃ見逃しちゃうスピードながらも、物凄く丁寧に太陽君を抱き上げた。


 その後も母親ーズの元に行っては『ばーば』と言って、二人の心もメロメロに。ロイとレオの事は『ろー』と『れー』と呼んで、満足した太陽君はスヤスヤと梓の腕の中で眠りに付いた。


 「……順番なんてどうでも良いな、うんうん」


 「自分の子供に呼んでもらえるのがこんなに嬉しいなんて…」


 残念ながら1番の称号は得られなかったが、呼んでくれたのは本当に嬉しい。大切なのは順番じゃなくて気持ちなのである。


 クリスマスイブに太陽君から素晴らしいプレゼントを頂いちゃったぜ。

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