第7話 突然の別れ
気がつけば季節は夏になっていた。
彼女と行くはずだった映画館、カラオケ、高級レストラン、TDLにUSJ、海にプールを僕らは制覇した。
それはまるでノルマのようだった。
楽しいはずなのに、日を追うごとに僕の心は沈んでいった。
*
ある日ついにこう言われた。
「別れましょう。あたし達最初から間違ってたんだよ」
「そうだね」
何も言い返せなかった。全てその通りだったから。
僕がそれ以上何も言わなかったので、先輩は僕の手を取って自分の頬に当てた。
「私じゃ君を元気に出来なかった。ごめんね。でも友達としてこれからもよろしくね」
彼女は涙を見せまいとしてすぐに駆け出していった。
途中転びそうになって思わず駆け寄りそうになった。
でも彼女は1人で立ってそのまま歩いていった。
*
休日も僕は居間で見ないテレビを見ていた。
風花さんの事を考えると、自己嫌悪で吐きそうだった。
「なに黄昏れてるのよ」
姉が僕の上からのしかかってきた。重い
「振られた」いや振ったのか
告白から始まってはいない臨時カレカノだったけど、別れは普通に辛かった。
「振られ2連チャンだね!」
「全て自業自得なので反論できない!」
「まあなんだ」
「なんだよ」
「これでわかったでしょ」
「うん、わかった」
僕は幼馴染のことが忘れられないってことを
「あと美少女に弱いってことも!」
「それはあるかも」
でも先輩がいてくれたおかげで僕は立ち直れた
「ほら、いつまでもメソメソしない!」
背中をバシッと叩かれて
「あんたがこれだと、あっちはもっと重症だな」
そう呟いて姉は出かけていった。
*
それからは何も変わらない毎日が続いた。
あれから教室に先輩が押しかけて来る事は無くなったけど、校内で会えば普通に立ち話をしている。
時々幼馴染が僕のこと見た気がしたけど気のせいだろう。
自分から話しかける勇気もなく、僕は勉強に逃げ込んだ。
何も考えなくても済むように。
*
中間テストの結果が発表された。
・・・まさかの学年9位
中学までは学年で二桁までしか取ったことはなかった。
遊ぶ時間全部を勉強に逃げたんだから、当然といえば当選の結果か
そんな事を考えてたら隣に誰かの気配がした。
ぼくは驚いた。
そこに立っていたのは僕の幼馴染だった。
「元気だった?」
「・・・うん。まあまあ」
少しは会話しろよと言いたかったけど、今の僕たちはこれでいい。
「頑張ったね。おめでとう」
「ありがとう」
久しぶりの会話が嬉しくてつい余計なことを聞いてしまう。
「彼氏とはうまく言ってる?」
それを聞いた途端、彼女は苦虫を噛み潰した顔をした。
「・・・別に普通だよ」
そっか まだ付き合っているんだ
「じゃあ、あたしもう行くね」
「うん」
そして僕はまたひとりになった。
余計なことを詮索して後悔してた。
「・・・しばらくは口聞いてもらえないな」
*
帰宅部の僕は授業が終わるとすぐ帰り支度をする。
そんな中不意に教室がざわめいた このパターンはあれですね
教室の入口に複数の男女が立っていた。
姉と風花先輩。あと男の人がひとり。何このイケメン。
クラスの女子の目がハートになってるよ。
そんな周囲の事などお構いなしに、姉は僕に話しかけてきた。
「来週から合宿が始まるから準備してよ」って
「合宿?何で僕が」
生徒会で宿泊研修があることは知っていた。その準備のため、副会長の姉も数日帰宅が遅くなっていたから。
「なんでもよ」
「次期生徒会役員候補として君にもぜひ参加してほしいの」
久しぶりに見た風花さんは相変わらす可愛かった。思わずお持ち帰りしたくなる。
「委員会なんて美化委員くらいしかやってませんよ」
それもじゃんけんで負けてのことだった。
「うちの生徒会の伝統なのよ。現生徒会執行部が次期役員と泊まり込みで伝達するすることが」
初めて知りました。
次期生徒会は既に決まっているらしい。そこにいるイケメンがそうだと。
その彼が、誰か頭が良くて暇そうな子いないかなって姉たちに聞いたら、
「ならうちの弟が良いかも 暇そうにしてたよ!」
そう話したらしい。
暇人ですがそれを人に知られるなんて。いったい何の罰ゲームですか。
「僕は書記の菊池。この前の生徒会選挙で次期会長に選ばれたんだ」
なるほど、このイケメンは生徒会の人なんだ。
「それで姉は僕をこのイケメンに売ったと」
「ガリガリ君おごってくれたし」
「僕の値段やっす!130円くらいだね」
「バラ売りのやつだから税込み78円ね」ひどい
「それで、会長の方からも彼が適任て考えたらしく」
ぼくは風花さんを見た。
しばらくぶりだけど、相変わらず小動物みたいで可愛かった。
じっと見てたら微かに頬が赤くなった気がする。やっぱり可愛い。
「どうかな?」
生徒会長は全校生徒による投票だけど、他の役員は会長に一任されている。
「わかりました。よろしくお願いします」
淀んだ僕の心を少しでも修正できればと。
わらにでも縋る気持ちで僕はそう返事をした。
「でもいいんですか」
「ん、なんだい」
「ぼくあまり頭良くないですよ。テストだって普通だし」
「ぼくはテストだけで見てないから。名物会長くん」
僕は姉の方を見た。
姉は手を振りながら、「諦めろ」と爽やかな笑顔でいった。
「あんたの相棒にも声をかけているから」
相棒って・・・おいまさか!
「あーきたきた」
「こっちよ」
そこに現れたのは
「・・・何で断らなかったのよ」
不貞腐れたような顔をした僕の幼馴染で
「よ、名副会長さん」
「元でしょ。お笑い会長さん」
「ね、彼女はきっと来るって」
そんなに簡単に忘れるような人じゃないって
思い出した。僕はこの爽やかイケメンに何処かで見た気がずっとしてた。
あの時。
告白の時、彼女のそばに立っていたイケメンだ
「恋人を生徒会に引き込んで悪い人ですね先輩」
ぼくは足元から崩れ落ちそうだった。
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