第37話 体育祭⑤

「なぁ修哉、花守さんどこか知ってるか?」


 体育祭の終わり、一度教室に戻ってきた後軽く話をしてそのまま帰りとなった。

 俺も帰ろうとするのだがいつも一緒に帰っている花守さんが教室にいないことに気づいた。


「んあ?花守さん?いや知らんけど」

「お前疲れすぎじゃね?」


 辺りを見渡してもどこにもいないので丁度近くにいた修哉に聞いたのだがあまりにも疲れているのか机に突っ伏した状態で返事をしてきた。

 まぁ体育祭終わった後だからこんなものなのかな。


「んー…、だとしたらどこに…」

「先に帰ったんじゃねぇの?急に用事が入ったとか」

「…そうなるよなー」


 突っ伏しながら単純かつまともなことを答える修哉に俺は頷く。

 確かに普通に考えればそうなるだろうな。

 花守さんは友人も多いだろうし修哉のいう通り急遽用事が出来たということも考えられる。

 しかし、何も連絡が来ないことは少し引っかかるのだが…。


「…それじゃあ俺も帰るか」

「おう、じゃあな」

「お前はとっとと帰れよ」

「うぃー…」


 俺は修哉とそんな短い会話をして教室を後にした。


―― ―― ――


(連絡ぐらいはしといた方がいいかな…)


 そう考えながら昇降口から出ようとする。

 もし花守さんがまだ学校にいたら向こうが困ってしまうので連絡ぐらいはしといた方がいいだろう。

 そう結論づけるとポケットからスマホを取り出す。


 しかし、スマホを取り出す瞬間ふとここから離れたところに目がいった。

 さらにそこには遠くからだが花守さんがその場所に入っていくところが見えた。

 そしてさらにはそこはいつぞやの中庭がある旧校舎あった。


 たしかあそこは今では普段は使われることが少なくなったのと同時に行事に使う物や使えなくなったものの一時的な物置の場所として使われていたりする。

 なので花守さんがあそこにいくことは謎だと普通の俺だったら思うが今日は体育祭があったではないか。

 もし、先生や友達に何か手伝いを頼まれたのならあそこに入っていくのも納得はする。


 しかし、どうしたものか…。

 結局花守さんはまだ学校にいたことが目視で確認できたがそうしたら俺は待っといた方が良いのだろうか…。


 花守さんがあとどのぐらいで終わるのかは分からないが夜道?を一人で帰らせるのは危険だ。

 ただでさえナンパにあったという経験とかがあるのだから尚更。

 …………うん、そうしよう。


 そうとなれば何をするかは知らないが手伝いに行くか。

 そういうのは一人でやるよりも二人の方が良いだろうし。

 もし、邪魔なら入り口で待ってればいいし。


 一人で色々考えた結果それに至った俺は体の向きを旧校舎の入り口にへと変え、そのまま直行した。


―― ―― ――


 さて、旧校舎の中に入ったわけだけども、肝心の花守さんはどこに行ったんだろう。

 旧校舎も小さいわけではなく、また俺もあまりここに来たことがないので中については中庭ぐらいして知らない。

 ということで、とりあえず最初は中庭にでも行ってみるか。


 俺はギシギシとたまになる床の廊下をゆっくりと歩いて記憶を頼りに中庭へと向かっていく。

 そして無事に中庭に着くと何故かそこの扉が開かれてある状態であった。

 俺は不思議に思ったがそれを無視して中庭に入った。


 扉から入って数歩歩いたところで視線の先に見つけた。

 花守さん………そしてその花守さんの視線の先にいる男の子を。


 ………。

 …………。

 ………………はい?

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