第10話 テスト期間①

 夏休み前のテスト、それはたいていの人にとっては特に苦もなくいつも通りに勉強をして臨み、夏休みを迎えるもの。

 しかしある一部の人にとってはその考えは一変する。


 例えば部活に力を入れすぎて勉学に全然力を入れなかったことによって、以前よりも成績が大きく落ちてしまう。

 そうなるとどうなるか。それは勉強漬けにされたりお小遣いを減らされると言った何かしらのペナルティが出てしまう。

 これは学生にとって苦痛でしかないのだ。


 そして俺は今、そんな例えばのやつに頼み事をされていた。


「頼む、智!俺に勉強を教えてくれ!」


 修哉はバスケ部に所属しており、実力は相当上のものだ。

 しかし、先ほど言った通り修哉はさっきの例えばの一人である。

 運動は上の方でも勉強は下の下でとにかく勉強は嫌いなのである。

 しかしそんな修哉が必死こいて俺に勉強を教えてもらいに来ている理由は、


「俺やだよ、夏休み補習は!夏休みは海に行きたいし祭りに行きたいしカブトムシ取りたいし!」


 と言った感じなのである。

 ここは夏休み前のテストで赤点を取ると夏休み中に学校に行って補習をしなければならない。

 それは夏休みにやりたいことがありまくる修哉にとっては絶望のなんでもないのだ。


「別に教えてもいいがお前俺よりも勉強できるやつと友達だったりしないのか?」

「いるにはいるんだがそいつは自分しか面倒は見られないとか言ってやがった…」

「そういうことか。…でも俺数学とか理科とかぐらいしか上手く教えられないぞ」

「な、なんだと…」


 俺は勉強では数学とか理科とかいわゆる理系の方が得意なのだが、文系の人だったりだとか心情だとかが苦手なのである。

 それを考えると文系はそれほど上がらなくなるかもしれない。


「くそー…、お前の友達に文系が得意やつはいないのか!」

「俺にそんな人いるわけが…あ」

「!なんだいるのか。頼む頼んでみてくれ」


 俺まだ、あ、しか言ってないのにすごい早口だな…。

 それでもまだ得意かどうか決まったわけではないが、俺には花守さんという勉学のスペシャルリストがいた。

 迷惑ではなければ花守さんに教えてもらうか。ついでに俺も。


「まだよく分からないが迷惑じゃなかったら頼んでみるよ」

「まじか!ありがとう心の友よ!」


 そんな臭いセリフを言いながらも、夏休み前のテストのテスト期間が始まっていく。

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