第2話:小 姑娘(シャオ・クーニャン)

そして月曜日、大学で真面目に講義を受けて、サークル活動で自転車を

しゃかりきに漕いで、疲れた体でマンションへ帰ってきた。


僕は大学へはロードバイクじゃなく折りたたみ自転車で通っている。

愛車は英国ブランドの「ブロンプトン」って自転車。


休みの時はブロンプロンに乗ってデジカメ持参で、街を探索にでかける。

自転車で走ると意外な場所を発見したりするから面白い。


見つけたレトロな喫茶店に入ると、たいがいご老人夫婦が営むお店だったりする。

その店の歴史を感じてコーヒーを飲んで帰る・・・至福の時。


さて大学から帰った僕は、そのままベッドにダイブして、寝てやろうかって

思った・・・けど腹減ってるし・・・。


あ、そういえば今日から、代行さん来てくれるんだよな。


「今、何時だ?」


そう思ってスマホを見た。

「あ〜そろそろ五時か・・・代行さんもう来てもよさそうだけど、遅いよな」

なにか冷蔵庫の余り物で腹ごしらえでもしようかなって思って台所に行ったら

ドアホンが鳴った。


あ、代行さんが晩飯作りに来てくれたんだと思って、僕は急いで玄関に行って

ドアを開けた。


そしたら・・・


「すいません、遅くなったよ・・・私ハウスベルから来た家事代行ね」

小 姑娘シャオ・クーニャンって言うだ・・・よろしくあるね 」


そう言って代行さんはペコリと頭を下げた。

で、頭を上げた、彼女を見て、僕はしばらく固まった。


僕はてっきり僕より年上の中年の女性か、おばちゃんが来るもんだと思い

込んでた・・・。


でも違ってた ・・・。

しかも?・・・なに?・・・その片言の日本語・・・中国人?


僕のマンションを訪ねてきた代行さんは、どう見ても俺と同い歳か歳下。

女子高生にしか見えないってくらい若い女の子だった」


「はい、これ」


「え?」


彼女は肩から下げた小ぶりのショルダーから自分の名刺を取り出して僕に渡した。


「小 姑娘?」

「???これ、なんて読むの?」


「シャオ・クーニャンって読むだ」


「シャオさん?」


「クーニャンでいいだ・・・そう呼んで?」


「はあ、クーニャンさんね・・・」


「シャオ・クーニャン」・・・それが彼女の名前。

僕はもう一度、クーニャンさんを見た。


チャイナドレスに髪は定番みたいなお団子ツイン、性格は見るからに快活そう。

愛想笑いだろうが笑顔がすこぶる可愛くて、ちらっと見える両の八重歯が

これまた可愛さをより強調していた。

まるでアニメからでも出てきたような典型的な中国娘って感じの子だった。


「あ、挨拶が遅れました、僕、蒼 敬四郎あおい けいしろう」って言います、よろしく」


「はい、知ってるよ、蒼 敬四郎さん・・・大事な、お客さんの名前だからね、

ちゃんと覚えてきたよ」

「よろしくあるね・・・蒼さん」


つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る