第33話

「父上、あなたはなにをしたいのですか? ようせいをいじめてもなにも良いことなんてないのに…」

リリーフィアよりもふたつ年が上なヨフィルレインは、友達の妖精を抱きしめながらそうつぶやいた。

「大丈夫だよ、ヨフィルレイン。 私はいつまでもあなたの味方だから。 そうだ、妖精の国に行ってみる? ヨフィルレインなら連れていってあげるよ」



   ***



「そろそろ城へ移動するぞ」

フィーディアンはリリーフィアを抱き上げると、羽をぱたぱたと動かして宙に浮かんだ。


「グラウィル、飛べそう?」

空を飛ぶためのフェアリーマジックを思い出そうとしているグラウィルを心配そうに見つめるシャラーティル。

「あと少し…… よし、思い出した。 もう大丈夫だ」

グラウィルは、自分の胸に手をあてる。


「フェアリーウィング」


グラウィルの背に現れたのは、綺麗な白銀の羽だった。

それを数回羽ばたかせれば、グラウィルの体は宙に浮かび、さらに動かせば自由にその場を飛び回れる。

「空を飛ぶのは久しぶりだな」

グラウィルは感覚を思い出すために辺りを少し飛び回ると、フィーディアンに合図を出した。



その合図を見届けると城を目指して一直線に飛び立ったフィーディアン。

そのあとを追って、シャラーティル、シャルロッテ、グラウィル、妖精達の順で飛んでいく。

「ふぁ~、木がいっぱいなの~。 あっ、さっきのふぇんりりゅしゃんだ」

フィーディアンの腕の中から街の景色にを眺めるリリーフィア。


その真下を颯爽さっそうと駆けているフェンリルは、こちらに気が付くと大きくひとつウォンッと吠えた。

フィーディアンはきゃっきゃっと笑い声をあげるリリーフィアを抱え直すと、ぐっとスピードをあげた。

更に喜ぶリリーフィアのためにと、シャルロッテは魔法で花吹雪をだした。



「うわぁ~、おはなきれいね~」

「でしょ? シャルのお気に入りはこれなの」

リリーフィアの横まで来たシャルロッテは、手のひらに一枚の花びらをのせると差し出した。


「これはヒィリアードという花なのよ」

「ひぃりあーど?」

「そう、ヒィリアード。 可愛いお花でしょ? 妖精の国にしか咲いていないのよ」

桃色の花びらをもつ小さな花、ヒィリアード。

ヒィリアードは小さな花が集まって咲いているため、どこかの国の紫陽花あじさいと呼ばれる花に似ているとか…

そんなヒィリアードの花は色鮮やかで、赤、青、紫のよく見かける色の他にも、桃色やレモン色など、多くの色が存在する。



「ほら、前を見てみろ。 城が見えてきた」

「しゅごいね~! お空にうかんでりゅの!」

フィーディアンの声で顔を上げたリリーフィアは、目をキラキラと輝かせた。

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