短い作品の短編集(リィズ版)

仲仁へび(旧:離久)

第1話 恋は盲目



 好き。


 好き好き好き。


 大好き。大好き。大好き。






 私は、今年で中学三年生。もうすぐ卒業です。


 ですが、私は。


 先輩が好きです。


 もう会える日はわずかか時間だけ。


 弱虫なら、その日だけで満足していたかもしれない。


 けれど私は満足などしません。


 後悔は残したくないのです。


 皆は私の恋を応援してくれません。

 むしろ、「やめて」と必死になって説得してきます。


 どうしてでしょうね。


 恋を阻むなんて、なんて無粋なのでしょう。


 ひどいひどい。


 ひどいわ。ひどいです。ひどいですよね。


 ね?


 どうしてそんな事をするのでしょう?


 普通だったらそんなのひどいって思うでしょう?


 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて当然だって。

 応援するのが普通の事だって。


 そうです。

 それが普通の事。


 それが常識です。


 けれど。


 けれどもですよ。


 でも、私は。


 恋路を阻む彼等の事を、悪くは言えないんです。


 だって、少し。


 もんの少しだけならば、皆の気持ちが分かるから。

 心配してくれるのはきっと、善意。

 止めようとしてくれるのは、きっと親切心。


 わざわざ口に出して行ってくれる分だけ、私の事を気にかけてくれてるって証拠だから。


 ありがとう。


 でも。


 ごめんなさい。


 だって。


 好きなんです。


 この気持ちは止められません。


 怖いほど膨らんで、まだ膨らんでいこうとするのだから。


 あの人が。


 あの方が。


 怖い人たちに囲まれていたのを助けてくれた時から、私の恋は盲目なのです。


 皆さんごめんなさい。


 ごめんなさい。


 ごめんなさい。


 どれだけ障害があっても、私は先輩が好きです。

 どれだけ不良でも、人を殺してそうな目つきをしていても、どれだけ乱暴な言葉遣いをしていても、好きなんです。


 え? 留年していても……ですか?


 そんなの決まってます。わざわざ聞かないでください。


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