二十年後の君へ

野林緑里

第1話

 「二十年後の〇〇くんへ


こんにちわ。元気してますか?ぼくは元気です。

いまごろ君は天国にいるでしょう。いや地獄かもしれない。

どちらにしても君はこの世にいないだろう。なぜなら、君はいつだって死にたかったからだ。いつも死にたい死にたいと心のなかで何度も叫んでいたんだから二十年も生きるはずがない。

どこかで死んでいるだろう。

未練なんてないよね。

だって君がそれを望んだんだもんね。

その世は嫌いだって

いいことなんてなにもないって君はいつも言ってたからね。

だから未練なく自ら生を終わらせたに違いない。

だから、この手紙は君へ届かないだろう。

もし君が読むことができたのならば、君は勝者だ。だって君はそこにいるから、ちゃんと生きているからだ。

もしも君以外のだれかが読んだなら敗者だ。

それは君がこの世にいない証拠だからね。


長くなったね。


もうそろそろ終わりにするよ。


さよなら


二十年後のぼく」




タイムカプセルから出てきたこの手紙を読んだとき正直気分が悪くなった。本当に俺が書いたものだろうか。

どんだけ病んだ小学時代を過ごしてきたのだろうか。

まあ心当たりがないわけじゃないが、まさかこんな陰気臭いこと書いてタイムカプセルに入れたとは思いもよらなかった。


まあいっか。


この手紙を読む限りでは俺は勝者らしい。


だって、今の俺は死にたいとは思わない。


もっと行きたいし、もっといろんなことやりたいからだ。


それに愛する人もいる。


でも、これは捨てずにとっておこうかな。


ちゃんと俺は自分に勝てたのだと自信が持ちたいからね。



バイバイ


弱気な過去の俺。


ぜったいに負けずに生き抜くよ。



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