14
その後は零士が持ってる映画のBlu-rayを観ていた。
昔の映画から最近のまで色々置いてあり、そこから1本選ぶのが大変なくらい置いてあった。
ソファーに座り、柚子を抱き締める零士の心の中は、本当はドキドキが止まらなかった。本音を言うと柚子を抱き寄せてキスをして、それ以上のことをしたい。だけど、柚子を傷つけたくなくて紳士を演じてる。そんな思いを持ってることを柚子に知られたくなくて必死に誤魔化してる。
柚子の方もほっとしていることを知られたくない。覚悟はしていた筈なのに、まだ踏み切れないでいる自分がいたことに驚いていて、先に進むのが怖かった。だから零士に「しない」と言われてほっとしている。
「柚子」
頭の上から呼び掛けられる。顔を上げると綺麗な顔がそこにある。その事にまだ信じられない思いと安心感と色んな感情が入り交じりになる。
「風呂、入るか?入るなら沸かしてくる」
「ん」
「待ってな」
柚子から離れた零士は風呂場へと行く。零士が離れていくと不安が柚子の中を満たしてしまう。零士がいることで安心感を得てる状態。いなくなるとこうして不安で胸が締め付けられるのだ。
「どした?」
戻ってきた零士は俯いていた柚子の頭をポンと置くと顔を覗き込む。
「不安そうな顔してる」
柚子の不安を感じ取ったのか、再び隣に座り抱き寄せた。
その距離に安心したのか零士の背中に柚子は手を回した。
「柚子……」
零士は柚子の髪を優しく撫でる。その手の優しさに柚子はほっとする。
(いつも会える距離だといいのに)
無理な話なのだけど、そう思わずにはいられなかった
◇◇◇◇◇
「柚子が寝室使え」
と寝室を案内する零士に「悪いよ」と言う柚子。
「いいから」
「ダメ」
ふたりはこんなやり取りをし始めた。
「いいから。俺は少しあっちの部屋に籠るから」
と指した部屋。そこは防音室になっていて、作曲したりする時に使う部屋。いろんな機材やパソコンが置いてある。
「柚子に会えたから、メロディーが浮かんできた」
そう言うと防音室に入っていく。
防音室に入ると中の音は全く聞こえない。
仕方なく柚子は寝室のドアを閉めた。
(眠れない……)
自分のベッドじゃないからなのか、防音室に籠ってる零士が気になるのか、柚子はなかなか寝付けなかった。
何度目かの寝返りを打った後、身体を起こした。
ひとりで寝室にいるのが寂しいのか。よく分からないけど、寝室の冷たい空気が邪魔して寝れなかった。
柚子はゆっくりとベッドから出ると寝室のドアを開けた。リビングには零士はいなかった。防音室の方を見るとドアの隙間から光が漏れている。そっと近付いてみた。
中で作業しているのかしていないのか。分からない程静かだった。
柚子は思いきって防音室のドアを叩いた。そもそも防音室のドアを叩いても聞こえるか分からないのだけど。
カチャ、と。ドアが開く。
「柚子」
柚子は零士に抱きついていた。
「どうした」
「一緒に……いたくて……」
小さな声で呟くように出た言葉に、零士は目を見開いた。そして優しい笑みを浮かべると柚子を中に入れた。
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