第33話
浅井side
5時限目
予定では三木と俺の小競り合いから始まり、クラス中が大乱闘になったのを見計らってププが職員室の先生達を呼びに行き、職員室に誰もいなくなった隙を見計らい、教師達の個人情報の入った場所を知っているププが職員室に侵入し、月島先生の住所を見つける…という流れだ。
日頃、やりたい事をやり、力を合わすことなんてない俺たちのクラスは今初めて一丸となり同じ目的を果たすために燃えていた。
5時限目を担当するのは国語の先生。
国語の先生は明るくて優しく、不良たちの集まりである俺たちのクラスのなかでも人気が高いほうだ。
なのになぜその先生の授業を狙ったか…それは先生が極端な怖がりでパニックになる事を俺たちが知っているから。
俺たちが演技の喧嘩をして落ち着いて対応されてしまえばどんなに暴れても意味がない。
だから申し訳ないという気持ちがありながらもあえて先生の授業を選んだのだ。
「じゃ~今から授業を始めま~す。教科書の94ページ開いてください。」
いつも通り授業中だというのにザワザワとし、それぞれがそれぞれのやりたい事をやっていてまるで授業中とは思えない雰囲気。
しかし、先生はそれが日常なので驚く様子もなく淡々と授業を進めていく。
すると、三木が俺にアイコンタクトをし俺はそれに頷いた。
M「お前ふざけんなよ!?」
机を勢いよく叩きながら立ち上がった三木。
身長が190近くもあり、立ち上がり睨むだけでカナリの威圧感があり、チラッと先生の表情を確認するとすでに怯えきっていた。
先生ごめんね…先生のことは嫌いじゃないけど許してね。
俺は心の中でそう謝罪し、三木からの怒りのバトンを受け取り机を蹴り飛ばしながら立ち上がる。
凸「あん!?お前こそ喧嘩売ってんのかこら!?」
三木の学生服の胸ぐらを掴み睨むと三木も俺を睨む。
他のクラスメイト達はヤジを飛ばしテンションを上げてまるでお祭り騒ぎだ。
先生のやめなさいというか弱い声も生徒たちのヤジによってかき消され、三木が大きな拳を振り上げたその瞬間が俺たちの乱闘騒ぎのスタートの合図。
三木はそのままの勢いに任せて俺の頬を殴り、予定とは違うその行動に俺がイラッとし睨むと俺のその顔を見た三木が焦って、クラスメイトが教室で乱闘騒ぎをしている間、耳元でごめんと何度も謝っていた。
ププが走って教室から出て行くのを確認すると、クラスメイト達は乱闘騒ぎを楽しみながら大暴れをしていて先生を確認すると教室の隅で泣いていた。
その姿に申し訳ない気持ちになったが、それしか方法がない。
暫くするとププの報告を聞いた教師達が俺たちの教室に来て乱闘騒ぎを止めようとするが、日頃から喧嘩や遊びで鍛えている若い俺たちの力に歳のいった教師達ではついていけずあわあわとしているだけ。
それを知っている俺たちはププが戻るまでの時間を大暴れしながら稼いでる。
しばらくすると涼しげな顔をしたププが口笛を吹きながら教室に戻ってきて、俺にピコンと親指をあげたので俺は乱闘騒ぎの終わりの合図を出す。
俺は思いっきり机を拳で叩き椅子に立ち上がって叫んだ。
凸「俺と三木の話しにお前たちが頭突っ込んでじゃねぇよ!!!!」
俺がそう叫ぶとクラスメイト達は終わりの合図だと悟り、すぐに乱闘を止めそれぞれの席にそそくさと戻る。
教師達はそんな俺たちの姿に呆気に取られていて教頭が俺と三木の所に来た。
「何の騒ぎだね…これは…」
凸「少し言い合いになっただけで…こいつらが勝手に騒ぎだしたんです。」
俺の言葉を聞いた教頭が教室のなかを見渡すと、乱闘騒ぎでぐちゃぐちゃになっていたはずの机や椅子はいつの間にか元通りに綺麗に戻っていて、クラスメイト達も珍しくみんな背筋を伸ばして椅子に座って教科書を開いている。
その光景を見た教頭はことを大きくしたくないと思ったのかこう言った。
「今回は大目に見て問題にはしないが次はないからな。もうすぐ卒業だ。大人しくしてろとは言わない。せめて乱闘騒ぎだけはやめろ。分かったな。」
教頭はそういうと他の集まった教師達を連れて教室を出ていき、先生は泣いてしまい授業どころではなくなったので残りの時間は俺たちだけの自習となった。
監視として教育実習できていた名前の知らない先生を俺たちの前に1人座らせ、その先生は俺たちに怯えているのかオドオドした顔をして落ち着きがない。
そして、俺は教科書を机の上に立てスマホを隠しププにメッセージを送る。
【メール:浅井】
ププ!浅井先生の住所わかったか!?
【メール:ププ】
俺の予想通りだった。
ばっちり入手しました~
写真撮ったから今送るか?
【メール:浅井】
あぁ頼む!!
そして、ププから無事に住所が送られてきた俺はクラスのグループトークに「作戦成功」とだけ入れた。
5時限目が終わると俺は慌てて立ち上がる。
凸「三木!俺早退するから。」
M「あぁ。気をつけてな。月島先生の家に着いたら連絡しろ!」
凸「分かってる。」
クラスメイト達にも手を挙げ早足に教室を出ると、早る気持ちの表れかいつの間にか走り出していて、俺は息を切らし月島先生の家にまで向かった。
つづく
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