第24話
浅井side
部屋に戻るとすぐ、月島先生は泣き顔を俺に見られたくなかったのか、お風呂に入ると言ってそのままバスルームへと向かった。
こんな経験が初めてな俺は、好きな人が自分のそばで悲しみ涙を流しているのにどうすればいいのか分からず、そわそわと落ち着かない。
すると、スマホにメールが届き俺はスマホを開いた。
メールの主は親友の三木からで俺のことを心配し、結局コンテストには向かったのかという内容だった。
しかし、俺はその内容を全て無視をし三木に速攻で返信をする。
【メール:浅井】
んな事よりちょっと聞きたいんだけど
好きな人が自分のそばで泣いてて
抱きしめてみたんだけどまた泣いちゃって
それが自分のせいで泣いてるのか
他の男のせいで泣いてるのか分かんないだけどどうすればいい!?
既読無視したらコロス。即返求む。
そうメールを送信するとすぐに既読がつき返信が返ってきた。
【メール:三木】
泣き止むまで抱きしめるか…
体で慰めるか…?
【メール:浅井】
俺のせいで泣いてるかもしれねぇのに抱くのかよ?
【メール:三木】
ってかお前さ?
【メール:浅井】
んだよ。
【メール:三木】
まさか月島先生泣かしたの?
三木からのメールを見てドキッとする俺は思わず順調に動いていた親指の動きが止まる。
するとまた三木からメールが来た。
【メール:三木】
お前コンテストに行ってるよな?
隣で泣いてるって月島先生の事だろ?
三木からメールを見て俺は返信に困り固まったものの、返信した。
【メール:浅井】
だから…
どうすればいいと思う?
するとあんなにも順調に返信が返ってきていた三木からの返信が突然途絶え、俺は三木からの返信をトーク画面を見つめながら待った。
数分後、三木からの返信がやっと帰ってきた。
【メール:三木】
んな事俺に聞くんじゃねぇ!
バカか。自分で考えろ!!
三木からのその返信を見た俺ははぁ~っと大きなため息を落とし、スマホを置くと月島先生の寝るスペースをあけたセミダブルのベッドに頭まで潜り込んだ。
しばらくすると先生がシャワーを浴び終えたのかバスルームから出てくるのが分かり、頭までかぶった布団から出ようとしたその時…
凹「浅井くん…もう寝ちゃったんだな…」
ボソッと言った月島先生のその声が聞こえてきて俺は布団から出るタイミングを失ってしまった。
暗闇の中、音だけが聞こえる。
布団の外で月島先生が何をしているのか分からない状況で聴覚だけが研ぎ澄まされた。
すると、パチッと電気の消される音が聞こえるとベッドに振動を感じ、俺の心臓はドキドキと早く動き始める。
ゴソゴソと布団を動かす感覚が頭までかぶった布団から伝わると、暗闇だった布団の中にTシャツに短パン姿の月島先生の体が見え、思わず俺は勢いよく布団から顔を出した。
凹「ごめん…起こしちゃったね?」
凸「いや…起きてたし…」
凹「そうか…」
電気を消され真っ暗な部屋の天井を見つめたままただ、時間をやり過ごすが…眠それそうになんてない。
セミダブルのベッドで好きな先生が隣にいるそんな状況で、平常心を保てるほど良い子じゃない俺は無理矢理目を閉じゴソゴソと何度か寝返りを打つ。
凹「狭くて眠れないよね?先生がソファで寝るね。」
月島先生はそう言って起き上がり立ちあがろうとするから俺はつい、月島先生の手首を掴むと勢いよく自分の腕の中に閉じ込めそのまま寝転がった。
ドクドクドク…俺の心臓は早く動き俺の胸に顔を埋める形になってしまっている月島先生にはもしかしたら俺の心臓の音が聞こえてしまっているかもしれない。
それでもいいと思った俺は月島先生を離すことなく抱きしめる。
窓から射し込む月明かりが微かに月島先生の顔を照らし出した。
凹「浅井くん…離しなさい…」
凸「あんな1人掛けの小さいソファでどうやって寝んの…」
凹「そうだけど…これは…良くないだろ…」
先生は俺の胸を少し押しながら俺の顔を見上げてそう訴えてくるが、その表情が逆に俺を誘っているように見えている事を月島先生は知らない。
凸「散々キスしたんだしハグくらい問題ないっしょ。」
凹「ダメだよ…」
そう言って俺の意思とは反対に絶対に折れてはくれそうにない月島先生に諦め、仕方なくゆっくりと力を緩めると、月島先生は慌てて俺から離れて背中を向けようとしたので俺はまた月島先生の手首をつかむ。
凸「仕方なくハグは諦めたんだから背中…向けんのは無し。」
俺がそういうと先生もそんな俺に諦めたのか仰向けのまま瞳を閉じる。
俺は先生の手と自分の手を繋ぎ合わせると俺も仰向けでゆっくりと瞳を閉じた。
凸「先生さ…恋人いるんでしょ?」
俺のその言葉を聞いた月島先生は驚いたのか目を閉じていても俺の方を向いていることが分かった。
凹「なんで…知ってるんだ…?」
凸「噂で聞いた。」
そう言って目を開け横を向くと先生の顔は俺の真横にあり、俺たちは暗闇のなか見つめ合う。
凸「佐々木のことが好き?」
俺がそう問いかけても月島先生からの返事は返ってこなくて、俺は小さなため息を落とす。
凸「あんな奴やめときなよ。あんな奴より俺の方が先生のこと幸せにしてあげられるし、あいつは先生の事愛してなんかないよ!?」
つい、勢いに任せて言ってしまった俺は言った後になってからあっ…と思い口を閉ざす。
すると、先生はそんな俺に気づいたのか俺の酷い言葉で傷ついたはずなのに何故かクスクスと笑いはじめた。
凸「何笑ってんの…」
凹「んふwだって…若いなと思って。」
凸「は!?それ今関係ねぇじゃん。」
凹「あるよ。若いからそうやって真っ直ぐに自分の思うまま感情を露わにして行動が出来るんだよ…俺もそうだった…なのにいつの間にか年齢と共に我慢を覚えて…感情を押し殺す事を覚えて…気づいたら悲しくても泣けなくなってた…なのに…浅井くんといると不思議と俺の心がありのままでいようとする。」
凸「それでいいじゃん…ありのままでいて何がダメなんだよ…俺は先生のことを大切にしない奴が恋人だなんて許せないんだよ!!」
俺は勢いよくそう言うと月島先生の上に覆い被さり先生を組み敷いた。
月島先生はそんな俺をじっと見つめ、キュッと下唇を噛み目に涙を滲ませゆっくりと手を伸ばし俺の頬を優しく撫でる。
その温かい手で頬を撫でられると、とても心地よくて何故か俺の方まで涙が出てしまいそうだった。
凹「ごめんね…」
意味のわからない突然の謝罪に戸惑う俺はゴクリと唾を飲み込む。
凸「なにが…」
微かに震えた声でそう聞き返すと月島先生は唇を微かに震わせながら言った。
凹「…好きになって…ごめん…」
月島先生はそう呟くと目尻から大粒の涙をこぼし、先生を泣かせてるのは恋人でもなんでもなく、自分なんだと俺は気づきそのまま月島先生の唇を塞いだ。
つづく
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