第25話 村の財政
俺は市場に来ていた。
海の町だけあって、魚や貝など沢山売っている。
魚買って帰ってもいいけど・・塩を探しに来たのだ。
「うわ、高い!」
塩は高級品らしく、手のひらサイズの小さい袋で一袋2000ネルだった。
「ん~」
思い悩んだが、思い切って買ってしまおう。
この世界での塩が、どんな味なのか興味があったのだ。
たぶんあまり変わらないとは思うけど。
「ミライ、今の買ったんだ。凄いね。お金持ち!」
アンは、はしゃいでいる。
まあ、旅行は楽しむためにきたものだし。
楽しければいいか。
「何か欲しいものある?」
「買ってくれるの??」
目をキラキラさせて、アンは雑貨が売られている露店に向かった。
「どれどれ」
アンはネックレスが気に入ったみたいだ。
キラキラした貝殻が付いたネックレス。
光に反射すると虹色に光っていた。
「きれいだね。それ欲しいの?」
「ん~でもちょっと高いかも・・」
値段を見ると1000ネル程。
「これ、下さい」
自分の物には悩むくせに、彼女の物となると話は別みたいだ。
思わず即答していた。
「わぁ~ありがと」
アンは喜んで抱きついてきた。
旅行もいいものだな。
その時はのんきに考えていた。
村に戻るまでは。
****
数日かかって馬車で帰ってきた。
「散財したなぁ」
まあ、たまにはいいか。
息抜きも必要だよね?
家の前に馬が繋がれていた。
アンの家に、客人が来ているようだった。
明らかに村人ではない。
「領主様は寛大なお方だから、今まで待っていたが、もう待てないと言っておられる。一週間後にまた来るからそれまでに用意しておけ」
家のドアが開かれる。
客人は馬に乗り、どこかへ行ってしまった。
「どうしたんですか?」
俺はファーレンさんに声をかける。
ドアが開いており、ファーレンさんが、床に膝を付けがっくりと肩を落としていた。
「ミライ、中入ろう」
俺はアンと一緒に家の中に入った。
****
「税金ですか・・・」
この世界にもあるのか。
前にいた世界よりも、ざっくりしたものらしいけど。
「払えなければ、私は村長を辞めることになってしまう・・家もいられなくなるだろう。最悪牢屋行きだな」
俺は聞いてみた。
「税金というのはお金ですか?それとも農作物ですか?」
確か農作物で税金を払うことがある、と聞いた気がする。
「この村では小麦を作っているのだが、不作でね。既定の量を取れなかったんだ」
「事情を話して待ってもらうとかは・・」
「去年も、一昨年も話して先延ばしにしてもらったのだが・・もう無理のようだ・・」
がっくりと肩をうなだれるファーレンさん。
「う~ん」
小麦か・・。
「お金の場合は?」
「お金は500万ネルになるね。とてもじゃないけどそんな大金・・」
小麦は作れるような気がするけど・・どこで手に入れたとかバレるとまずい。
お金は・・女神さまに駄目って言われた気がするなぁ。
試しにお金をイメージしてみた。
金貨出てこい!
「・・・」
何か制限がかかっているのか、何も起こらない。
駄目か・・。
お金の方が手っ取り早いんだけどな。
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