第5話:芳樹の母親。

先日、土曜夜市の時、美都みとちゃんちにお邪魔した。

だから今度は僕の家に招待することにした。


僕の家は両親とも、どこかに出かけるって滅多にないから、ふたりが

いない時にってことにはなかなかならない。

そんなこと言ってたら美都ちゃんを僕んちに連れて来ることなんかいつの

ことになるか分からないからね。


美都ちゃんを僕んちに連れて来た日は父親は仕事ででかけていて家には

母親しかいなかった。


だから、とりあえず美都ちゃんを母親に紹介した。

いつかは紹介する時が来るからね・・・早めのほうがいいだろ?


そしたら母親が天と地がひっくり返ったみたいに驚いて・・・

しかも号泣した。


「あのさ、芳樹・・・私、帰ったほうがいいんじゃない?」

「私が挨拶したら、お母さん急に泣き出したよ?」


「待って、待って・・・せっかく来てもらったのに・・・」

「ちょっと待ってよ」


「母ちゃん、なに泣いてんだよ・・・京町さんが、美都ちゃんが驚いてる

じゃないか?」


「だって〜芳樹に彼女ができるなんて・・・あんたみたいな軟弱男に

彼女なんかできないって諦めてたのよ、お母さん」

「そう思うと毎日胸が痛くてね・・・」

「でもよかった・・・これでゆっくり眠れるわ、ようやく熟睡できそう」


「いちいち大袈裟なんだよ」


「しかも、こんな綺麗なお嬢さん・・・あんた京町さん大切にしないと

絶対スズメハチに刺されてアナフィラキシーショックで死ぬわよ」


「なんで、そうなるんだよ」

「言ってることが、ずれてて支離滅裂」


「京町さん・・・この子のことよろしくお願いしますね」

「あなただけが頼りなんですから・・・」

「もし、あなたにフラれたらきっとこの子一生彼女なんてできないんですから」


「あ、はい・・・」


「芳樹・・・あんたのお母さん感受性強そうね・・・」


「いきなり美都ちゃんを連れてきたからパニクってるだけだよ」

「女の子が僕んちに来たの初めてだからさ」


「ウザいだろ?いいから・・・放っといて僕の部屋に行こう」


「ウザいなんて言ったらお母さん悲しむぞ、芳樹」


「いいの、いいの」


「お母さん、ご心配いりませんから、私が芳樹くんをちゃんと引っ張って

いきますから、ご安心してください」


「まあ、なんて頼もしい・・・京町さんに全面的にこの子をお預けしますね」

「芳樹、あんた万が一にも京町さんにフられないようしっかりしなさいよ」


「フられること心配してたら告白なんてしてないよ」


「うそ・・・ビビりながら私に告ったくせに?」


「そうだけど・・・結果的にいいよって言ってくれたじゃん」


「そんなことよりここでくちゃべってたら僕と美都ちゃんの貴重な時間なくなるよ」

「美都ちゃん、僕の部屋に行こう・・・」


だからそこは母ちゃんを無視して彼女を僕の部屋に連れて行った。


「僕の部屋狭いからソファとかないから、絨毯の上に座るかそれか

ベッドを背もたれにして座ってくれたらいいから・・・」


美都ちゃんはベッドを背にして座った。


「お母さん大丈夫?」


「ごめんね・・・大袈裟な母親なんだ・・・まあ僕がしっかりしてないのも

いけないんだけど・・・でも軟弱なんかじゃないよ・・・ただ争いごとや

喧嘩とかが嫌いなだけなんだ・・・あと雷もね」


「雷って・・・・小学生か?」


「だって怖いもん・・・だから耳栓持ち歩いてる」


「あはは、まじで?、ヘタレだ・・・可愛いね芳樹は」

「じゃ〜お母さんに心配かけないよう、私がしっかり芳樹の面倒みなきゃね?」


「面倒って・・・」

「あのさ・・・僕たちって・・・」


って言いかけた時、僕の部屋のドアがいきなり開いて母親が入ってきた。


「おやつと飲み物持ってきたわよ」


つづく。




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