レイクシアのダンジョン5
わたしは死んだと聞かされていたフランシスカの元クラスメイト、そしてこのダンジョンの主のアウレリアと彼女の部屋で紅茶を飲んでいた。
わたしは気になっていたことをアウレリアに聞いてみる。
「あんたって、フランシスカとこのダンジョンのボスのリッチを倒しに来て死んだって聞いたけど、なんで生きてるのよ?」
アウレリアは昔を思い出すように天井を見つめた。
「懐かしい話だわね……、まあ私は死ぬ気で生き延びたけど」
ふーっと紅茶で温まった吐息を放つと過去の話を始めた。
「水晶学園の夏休みの自由研究でね……。避暑に来たレイクシアで自由研究の題材になるいい物が無いかと森を探索していたら、偶然出来たてのこの小さなダンジョンを見つけたのよ。それで、冒険者ギルドにダンジョン発見の報告して自由研究をまとめようとしたら、フランシスカが冒険者ギルドへの報告前にダンジョンを攻略してお宝を手に入れようと言い出してね……」
さすが欲深なフランシスカ、昔から変わってないのね。
アウレリアは話を続けた。
「こんな出来たてのダンジョンには大した宝も無くて割に合わないから潜るのはやめようと私が必死に説得しても、フランシスカはまだ誰も潜ってないダンジョンなら運よく良い宝が出るかも知れないといって私の警告を聞かずに一人で潜り始めちゃったのよね。仕方なしに私もついて行ったんだけど魔法使い二人じゃ魔法無効ボスのリッチに敵うわけもなくコテンパンにやられたのよ」
たしかリッチには魔法が全く効かなかったらしいわね。
「私は魔法だけしか使えないフランシスカと違って多少剣と盾が使えたし、ある程度の準備もしてきたから『ダンジョン脱出の護符』も持ってたので私が囮になって耐えている間に逃げてって言ったんだけど、フランシスカは私のカバンから護符をひったくって逃げて行ったの……助けを呼んで来るって言葉を残してね」
フランシスカって自分が助かる為ならなんでもするとんでもない奴ね。
開いた口が塞がらない。
「助けを呼んで来るってフランシスカの言葉を信じてリッチの攻撃を一昼夜耐えきったけど、助けは全く来ない。そりゃそうよね……、フランシスカはこのダンジョンに私を残したまま封印を施して逃げて行ったんだから……」
アウレリアはため息を吐いた。
私もため息を吐いた。
「疲労の限界が来てもう助からないと諦めかけた所に、玉座の間の隅に作り掛けの新しいダンジョンフロアの入り口を見つけたからそこに潜り込んでリッチがやって来れない様に土魔法で閉じたのよ」
それが第四層から続いてるダンジョンなのね。
「それからは助けが来ることを唯一の望みとして必死に生き延びてやったわ。コケを食べて泥水をすすって、終いには虫やモンスターまで食べて……」
なにその過酷なサバイバル……。
あまりの過酷さにわたしは言葉を失った。
「体力も回復したから地上に戻ろうとしたら、今度はダンジョンの3層以上に上がれなくなっててね……、フランシスカがこの地の去り際に強固な封印アイテムでダンジョンの完全封印をしていったのは間違いなかったのよ。私は、見捨てられたって気が付いたわ」
アウレリアがこのダンジョンに閉じ込められたのって全部フランシスカが悪いんじゃない。
後でウィリアム王子に頼んで泣いても許されないぐらいのキツイお仕置きをしてやるんだから。
フランシスカ、楽しみにしておきなさい。
「私はまだ生きているとアウレリアに助けを求める念話を送り続けると共に、ダンジョンフロアの拡張をしていたらいつの間にかリッチのダンジョンの規模を超えてたみたいでダンジョンの所有権が私の手に入ったみたいなの。それから友好的な獣人の住む街を作ったりして今ではちょっとした規模の街になってるわ」
アウレリアが言うには街には人間こそ住んでないものの、穀倉地帯や鉱山地帯そして獣人が棲みついた街があるそうな。
アウレリアとそんな話をしていると、扉がけたたましく開け放たれた。
「アイビス様!」
飛び込んできたのはアイ。
アイは文字どうりわたしに飛び込んでくると、わたしの胸に顔をうずめ泣きじゃくる。
「アイビス様ご無事でしたか? アイは、アイは、アイビス様が心配で心配で仕方ありませんでした」
アイはアウレリアに敵意を剥き出しにした。
「こいつがアイビス様をさらった犯人ですか? 今すぐ始末します」
アイが飛び掛かろうとするので必死になだめる。
「この人はアウレリア。私の親友よ……ねっ?」
アウレリアを見ると首をぶるんぶるん縦に振って頷きまくっていた。
「友だちですから……」
アイに襲われそうになったアウレリアは涙をボロボロ流して怯えていた。
フランシスカに頼んでダンジョンの封印を解いてアウレリアをこのダンジョンから解放すればこの騒動は全て終わるとわたしは思っていたんだけど、そうはならなかったのよね。
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