与えられる国なんていらない
「アオバのお兄さんで、アカネの、弟……?」
私はがく然とする。
アカネに、アオバ以外のきょうだいがいるなんて、まだアニメで観ていなかった。でも、設定とかストーリーとか、そんなこと言っていられない。
「どうして。シロウ。行方不明だったあなたが、なぜ……!」
アカネがよろけて、私が支える。明らかに、動揺している。
「……三年前、オレはコカゲ帝国に乗りこんで、国を乗っとった」
悪の帝王であり、アカネの弟であるシロウは、低い声でたんたんと話す。
「それから、オレはコカゲ帝国を戦争国家に作りかえた。王国から兵士も奪って、準備は整った。今日、オレの手でリーフェスタ王国を滅ぼす」
シロウが、私たちに剣を向ける。彼の目は……本気だ。
「意味、わかんないし!」
とっさに、私はどなった。
「あなたは、もともとアカネとアオバのきょうだいなんでしょ? 王子なんでしょ!」
王子は、大人になったら国王になるんじゃないの?
どうして、自分が生まれた国を「滅ぼす」なんて言うの?
シロウは、私のことをチラッと見るけれど、すぐに興味をなくしたみたい。
私にもたれかかっているアカネと、私たちを守るように立っているキューターリーフを突きさすような視線でにらむ。
「与えられる国なんていらない。おまえたちから、奪いとらなきゃ意味がない!」
シロウが走りだす。まばたきの間に、シロウの剣は目の前にやってくる。
「ッ!」
私はアカネを抱きよせる。剣はふりおろされて……
ギィン!
頭の上で、火花が散った。
「本当に、姉さんと戦うつもり? 目を覚ましてよ、兄さん!」
キューターリーフが、シロウと剣を交えてさけぶ。
今だけは、王国を守るキューターリーフじゃない。目の前にいるのは、アオバ。シロウにまっすぐ向きあう家族として、アオバはここに立っている。
でも、シロウは止まらない。再び、私とアカネめがけてつっこんでくる。
シロウは、アカネばかりをねらってくる。アオバが守ってくれるけど、背中を気にするあまりに攻撃ができない。
さらに、アオバはケガのせいで本調子じゃない。このままじゃ、いつかやられちゃう!
「姉さん! メイを守って!」
アオバが剣を受けとめながら、アカネに声をかける。
アカネはまだショックから立ちなおっていない。私の腕をつかんで、ふるえている。
「でも、わたくしは……」
「ボクが、兄さんを止めるから! メイを……友達を、守って!」
ともだち。その言葉に、アカネの体のふるえがおさまった。
「……メイ。支えてくれてありがとう。もう大丈夫です」
アカネは剣を拾って、ぎり、とにぎりなおす。
「アオバ。もう、うしろは気にしなくていいですわ」
「うん。メイをお願い、姉さん」
そして、私の前にふたりが並びたつ。アカネは守るため。アオバは打ちくだくため。
あこがれのふたりが、私の目の前で戦っている。
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