窓辺からふたり飛び立つ

「アオバ!」


 ベッドの上で、アオバが起きあがっていた。まだキズが痛むのか、顔をゆがませている。


 私がかけよって、優しく、それでも強くアオバの体をおさえる。


「ねてなきゃダメ! この部屋は兵士さんたちが守ってくれているから、安全で……」


「ありがとう、メイ。でも、止めないと。……姉さんは、帝王と戦ってはいけない!」


 迫力に押された私をよそに、アオバは剣を手に取る。立ちあがろうとするけれど、ガクン、とその場に膝をついてしまった。


「う、くっ……」


 私は、アオバの前に立ちふさがる。


「どいて。メイ」


「いやだ。起きたばっかりで、体の調子も最悪でしょ」


「でも、ボクが戦わないといけないんだ」


「なんで……?」


「ボクが、キューターリーフだから。王国を……みんなを、守らないと!」


 その言葉に、私は考えるよりも先に言っていた。


「ちがうっ!」


 私はアオバの肩をつかむ。


 アオバは、やさしすぎる。


 アカネや王国の人たち、コカゲ帝国のララちゃんたちまで守ろうとする。そんなアオバが、だれより苦しむなんて、まちがっている。


 それが、キューターリーフの設定? キャラクター? ……冗談じゃない。


「ここにいるのは、キューターリーフじゃなくて、ただのアオバ! 痛いって、苦しいって言ってよ! がまんしないでよ!」


「……メイ。ありがとう」


 アオバは私の肩に手を置いて、体をはなす。


「でも、ボクは、行く」


「アオバ!」


「だから」


 アオバは私に手を差しだして、言ってくれた。


「ふたりで、いっしょに行こう。メイ、ボクと来てくれないかな?」


「……!」


 私がするべきなのは、しばってでもアオバをベッドにねかせることだ。そんなことはわかっている。わかって、いる……。


 でも、私はアオバの手をにぎって、大きくうなずいた。


 世界があなたが苦しませるなら、私もいっしょに苦しむ。私とアオバは、いっしょだ。


「……メイがいてくれて、よかった」


 キン……! アオバが剣をぬくと、私の目の前で光に包まれる。


 ヨロイとスカートに身を包んだ、凛々しいキューターリーフ。私はあこがれのヒーローと、手をつないでいる。


「オレ様も連れてけヨ! そのほうが、おもしろそうダ!」


 と、リドリィが私の頭に乗ってくる。


「行くよ。しっかり、つかまって!」


 開けはなった窓から、私たちは飛び降りた。真っ逆さまに落ちていく! と、ゾワっとしたのは一瞬だけ。


 木の葉がどこからか飛んできて、私たちを乗せてくれる。


「葉っぱが、足場になった! 空飛ぶじゅうたんみたい!」


「疾風に舞う木の葉に乗って、さっそう参上、だよ」


 得意げなキューターリーフといっしょに、雲と並んで走っていく。


 目的地はひとつ。敵をばったばったとたおしていくアカネが目指す、小高い丘。そこには、悪の帝王が待ちかまえている。


 アカネと帝王の激突寸前、割って入る!


「ちょっと、待ったぁあああっ!」


 私とキューターリーフが、丘の上に降りたった。

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