9話 幼女を守りし者

「それじゃあ改めて、コーラです」


 目の前に座るスク水を着た幼女に自己紹介をする。


 うん、異様な光景だな。大衆食堂にこんな奴がいたら2度見するね。でもゲーム内だし俺が知らないだけで結構いるのか?いや、ないな。流石に街中にこういう人がいたら目立つだろうけど見たことないし。


長内妖女おさないようじょと申します。妖女と呼んでください。いいお店でしょう?」


 ……それはどっちのようじょだ?ややこしいな。


「確かにいい雰囲気のお店だけど、絶対あの娘目的だろ」


「いえ、目的だなんて悪い言い方は良して下さい。見守っているだけです」


 いや、どっちにしろダメだろ。やってる事ストーカーだからね。


「ま、この間は助かった。飯代は俺が奢るよ」


「いえいえ、昨日エミリーちゃんと顔なじみになれたのでお礼なら結構ですよ」


「おい、そういえば昨日エミリーちゃんの事付けてたストーカーしてただろ?」


 お花屋さんでエミリーちゃんとスク水幼女いや、妖女さんが話しているのを思い返してよくよく考えるとおかしな点がいくつかあったんだよね、例えば今はスク水着てるのにあの時は着ていなかったとかね。


「ストーカーなんてしていませんよ。ただ、見守っていただけです」


「はい!アウトー、付けてた事は認めるんだな。このストーカー!」


「嘘は付きません。コーラさんとは仲良くしていたいですからね。同じく幼女を守りし者として」


「まぁ、嘘は良くな……まて、今なんて言った?」


 俺が、このロリコンと同じだ……と?一体なぜそうなった?

 確かに幼女は可愛いがそれは人が並に持っている感情だ。恋愛だとか過度に愛でようという気はない。なのに何故?


「不思議そうな顔をしているが、1番最初。この世界に君が降り立った瞬間、昨日の娘エミリーちゃんを助けただろう?誰しもゲームを始めたばかりで浮き足立って直ぐに自分のやりたいことをやりに行くものです。そんな中君はとっさにエミリーちゃんを助けただけでなくNPCだと言うのに丁寧に安全なところまで送り届けましたね?まぁ、手を繋いでいたのは羨ましかったですが。こんなことできるのは同士くらいでしょう?」


「見ていたのか、そういや、あの時変なこと言ってる奴がいたな、妖女さんだったか。まぁ、それくらい誰でもやるだろ近くにいたら。多分俺が行かなくても妖女さんが行っただろうし他の人が行っていた可能性もある。そう特別なことはしてないだろ?」


「確かにそうですな」


「で、結局昨日はどうなった?」


「私が取ってきますよと改めて言うと大層喜んでくださいました。そこで相談なのですが、綺麗な花が取れる場所を知っていたりしませんか?」


  綺麗な花か……うーん、どっかあったかな?世界樹の麓にあった花畑は綺麗だったがあそこにあるのはお花屋さんで売っているのを見かけたしなぁ。


  あ、そうだ。


「今受けているクエストで月光草と言うのを採取しないと行けなくてこの後取りに行こうと思ってたんだけど、もしかしたら綺麗な花が咲いているかもしれない。良かったら一緒に行きます?」


「ほぉ、月光草……聞いた私が言うのも何ですが、名前からして希少な花のようですが、良いのですか?」


 独占するつもりもないしな。それに巡り巡ってエミリーちゃんのためになる。妖女さんも今しっかり話した限り幼女に関すること以外はまとも。むしろ、ものすごくいい人のようだし別に花の咲いている場所くらい、教えたって問題ないし俺の目的はクエスト達成することで、そこに強いプレイヤーだと思える人と行ければ達成率が上がるってものでこっちにもメリットはある。


「ツァーリ山の頂上にあるみたいなんですけど、 問題ないです?」


「ええ、問題ないですが、私のことを罵った時の口調で良いですよ。この世界はゲームですし肩身が狭くなってしまいます。……それにその方が興奮しますし」


「そうですか、いや、わかった……ん?今なんて言った?」


「いえ、月光草と言うくらいですから夜に行った方がいいのではないかなと思いまして」


「あーそうかもしれませ、そうだな。夜に行くか。それと俺のことも気軽に接してくれ」


「私は気にしないでください。リアルでも常にこんな喋り方でして、他の喋り方がなれないもので」


 ほぉ?社会人なのか?そうか、それにしても夜に行く、か……その考えはなかったな。夜じゃないと花が咲いていないみたいな条件ありそうだ。なんなら、山の頂上という何かありそうな所にあるのにプレイヤー間で有名になってないし他にも取るための条件がありそうだ。


「お待たせ致しました!グラタンとえっと、、オムライスです!」


「お、美味そうだな。よし、これ食ったら早速行くぞ!いざツァーリ山。あ、スプーン貰ってもいい?」


 失敗は誰にでもある。だから、スプーンがないからとグラタンを素手で食べようとするな。ちゃんとスプーンをもらえ。ゲーム内でも余裕で火傷するぞ。本当に大丈夫かなぁ。ちょっとこいつとフレンドになったのは早まったかもしれない。









「おー結構高い山なんだな」


 街を抜け、谷にかかった橋を渡り峡間高地きょうかんこうちの中心にあるというツァーリ旧探鉱山まで歩いて1時間ほどかかった。採掘ができるため人気のあるフィールドらしく途中全然モンスターとの戦いにならなかったためスムーズに進むことができた。


「ツァーリ旧探鉱山廃坑、廃坑型のフィールドか」


「ここからは敵が増え強くなりますので、お気を付けください。ほら、言ってるそばからモンスターが寄ってきましたよ」


 探鉱山廃坑って名前だし鉱石系のモンスターかな?それとも蜘蛛とか?


音響蝙蝠ソナーコウモリ、蜘蛛じゃなかったか。ふむ、名前からして音で攻撃してきそうだな」


「挑発!」


 タンク御用達スキルの挑発で妖女さんが敵のヘイトを自身に集める。


 それにしても妖女さんがいると安定するな。妖女さんは防御高めのタンクで今もで多くの蝙蝠を抑えてくれている。俺はその蝙蝠の後ろからただ切りつけるだけでいい。ソロでも行けないことはないんだろうけどやっぱり格段に楽だろうな。それにこっちのレベルは3だったが適正は初期フィールドなのにフィールドボスを倒した先のエリアで戦っているからかレベルが上がる上がる。スキルも色々と増えたけど正直もう把握してない。 


「手ごたえがありませんね。どんどん行きましょう」


 時折現れる蝙蝠とやはり想像通り出てきた蜘蛛を倒しながら迷路のように入れ込んでいる廃坑を進んでいく。戦闘では全然危ないシーンなどなかったが、たまに壁の隙間や天井から現れては噛んでくる潜伏小蛇ハイドスネークがとにかくうざかった。戦闘直自体は低いんだがめちゃくちゃ小さく見つけることができず噛まれて毒状態になることが数回あった。そのおかげで、アンチポイズンポーションがなくなってしまった。はぁ、お金全然ないってのにどうしてくれるんだ、この蛇め。


「それにしても、コーラさんよくそのレベルで戦えますね。私にはそのようなこと到底できそうにありません」


「いや、運がよくて色々とかみ合っただけだからそうでもないと思う。多分前線組はもっとPSあるだろうし、そんなこと言ったら妖女さんだっていくらレベル53だからってさっきからHPが9割以下に行ってるの見てないんだが?どんだけ耐久力あるんだよ?詳しくは聞かないけどさ」


「ちょっと性能のいいリジェネを覚えましてね」


 リジェネか.....俺も欲しいな。剣スキルとかは剣を使ったら覚えられるのはわかるがそういうスキルは何がトリガーになって手に入るかわからんからなぁ。検証組に期待かな。とりあえず、今は月光草を手に入れないとな。

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