居残り寮生、異世界集合。

倉沢トモエ

第1話 すずらん

 県下一と云われる百五十年の伝統。

 そのF女学院高等部寮、〈鈴蘭〉である。


「集合~」


 今日の首謀者、北さんのゆるい号令がかかって、あたしたちは自習室に集まった。

 北希実きたのぞみさん、滝川たきがわあい子さん、そしてなぜか寮生じゃない通学生のあたし、田谷たやミズキ。


「寮母先生が戻られるのは、夜八時過ぎということよ」


 ご実家の秋田でご法事ということで、日帰りするため早朝からいらっしゃらない。


「代理の姉ちゃんは、寮母室でずっとSNSやってるから余裕」


 留守番に来たのは、そのままF女学院大学に進学したという先輩ひとり。


「姉ちゃんとか言わないで。神坂こうさか先輩よ」


 中等部からずっと寮生の滝川さんは、顔見知りみたい。


「え、いい先輩だったの?」

「ええと……」


 濁された。

 まあ、時間がないから進めよう。


「おはよー」


 そこに、矢口やぐちマミコが割り込んできた。大きい荷物抱えて。


「なんで? 外泊でしょ?」

「いやあ、オンナいたからさ、オンナ」


 ん? 外泊って、どこよ?


「修羅場避けたいじゃない? 一旦撤退よ」


 外泊許可って、難しいと聞いていたんだけどなあ。


「で? なんで田谷ちゃんまでいるのよ? なんで制服?」

「学校の図書館で勉強する、って言ってきたからさあ」


 今は大型連休なのだ。

 寮生はみんな帰省してるのに、この三人は残ってて、それだけじゃなくあたしまで呼びつけてさ。

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