第47話 ギルドマスター③
「じゃあ俺も単刀直入に聞くけどさ。この世界って本当に戦争しているの?」
俺は冒険者ギルドマスターであるアルマテア・ガラハッドに単刀直入に問うた。
「明星君、唐突過ぎやしないかしら」
「いや一ノ瀬、君だってこの世界の歪さはどこか感じていただろ?」
「それは……」
アリスが言葉を詰まらせた。察するにやはり彼女も俺と同様の疑問は抱いていたらしい。
ずっと疑問だったことだ。
そもそも勇者と魔王という前提が可笑しい。元いた世界にもそういう話は数多く存在したが、あくまでも神話や創作でしかない。
魔王軍という国に匹敵する規模の脅威に対して、勇者という個人で対抗すること自体がナンセンスなのだ。
勇者が弱かったら? 勇者がしくじったら? 勇者が反逆したら?
簡単に思いつくだけでもこれだけの不安要素があり、あまりにもリスクや運要素が高い。そんな存在に世界の命運を託すなど正気の沙汰ではない。
しかしそう疑問を抱いたところでこの世界に対する情報が少ない現状、俺の中に明確な答えもましてや仮設すらない。
しかしギルドマスターという決して低くはない立場にいる彼女であれば何か知っているかもしれない。
「どうしてそう思ったのかな?」
流石と言うべきか、こんな突飛な問いにもギルドマスターの表情は崩れない。
「まぁもうご存じかもしれないけど、異世界人である俺達からしたら勇者や魔王なんて話は創作物でしか聞いたことがないんだよね。だから当然の疑問なんだよ。それに王国の態度がどうにも引っかかる」
更に極めつけが王国側の態度だった。どこの馬の骨かも分からないような異世界人に頼ること自体が意味不明なことはもちろん、国の存亡を懸けた戦争中にも関わらずその態度はあまりにも余裕に溢れていた。
なんだったら戦争の核とも言える聖剣を持つ勇者、つまり俺に訓練をさせないぐらいの舐めプ具合だ。そう疑問に思うのは当然と言えた。
「その疑問を私にぶつけてきたのは、君で二人目だよ」
またか。ニャルメアの時もそうだったが恐らく異世界人かつ俺と似たような考えを持った存在がこの世界にいるようだ。
「マーリンというなんとも不思議な雰囲気を纏った少女だったよ。まぁそれは一度置いておくとして」
アルマテアはどこか遠い目で懐かしむように呟いた。俺にはあずかり知れぬことだが、色々とあったらしい。
「それはさておき君の疑問に答えようか。まずこの世界には魔王軍という明確な脅威は存在し戦争しているのは確固たる事実だ。ただ――」
一拍。
「魔王軍はどうか知らないが、人類側の戦争による死傷率が有り得ないと思えるほど少ないのだ」
「それって――」
しかし残念なことに俺が次の言葉を発しようとしたその時、遮るようにギルドマスター室にギルド職員が飛び込んできた。
「そんな慌ててどうしたんだい? 一応私達は大事な会議をしていたのだが」
「そんなことを言っている場合ではありませんギルドマスター! 王国兵達がこのギルドを取り囲んでいます!!」
まさかの展開。俺の問いなどもはや遥か彼方。事態は新たな局面へと突入しようとしていた。
◆
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