第10話
私は安心させるためにもにっこりと微笑んでみせた。
(さて……早速行くとしましょうか)
私が決意すると、カイル君が心配そうに尋ねてきた。
「本当に大丈夫かよ?俺もついてこうか?」
私は彼に首を振った。
「ふふ……流石に初級冒険者について来られても私は嬉しくありませんね」
正直カイル君はまだ実力不足なのだ。
カイル君は悔しそうにうつむいたが、すぐに顔を上げて私を見つめた。
「そうか、無茶はするんじゃないぞ」
彼の瞳には心配の色が浮かんでいるのが見えた。
(どうやら私は信用を失ってしまったようですね……まぁ自業自得ですけど)
私は苦笑いを浮かべると二人に見送られ、家を出たのだった。
(さて行きますか!)
道中、私は目的の場所に向かっていたが途中の森の中で突然立ち止まると前方に見える開けた場所で立ち止まった。
そして真剣な表情になって短剣を抜くと周囲に気を配り始めた。
その時だった。
正面から3体のゴブリンが現れたのだ!
(これは丁度いいですね……試させてもらいましょう!)
私は先手必勝とばかりにゴブリンに攻撃を仕掛けた!
「はああ!!」私は気合いを入れてゴブリンの1体の脳天に短剣を叩き込んだ!
(これは硬いな……)
一撃で倒そうと思っていたが予想以上に頑丈だった為、攻撃の手が止まってしまった。
その隙を見逃してくれるほどゴブリンは甘くはなかった。
1体は棍棒を武器として私に襲い掛かってきたし、残りの一体は好機とみたのか弓を構え始めたのである。
(まずは邪魔なゴブリンを片付けることからはじめますかね……)
私は殺気を込めて3体のゴブリンを睨み付けた!
「グルオ!?」
恐怖したゴブリンたちは一瞬動きを止めた。
私はその隙を逃すことなく連続して斬りかかり、今度は2体のゴブリンを倒した!
(これくらいで良いだろう)私はゴブリンたちから距離を取ると残りの1体に魔法を唱えた。
(ファイアストーム!)
炎が巻き上がり一瞬にしてゴブリンは燃えてしまったのである。
「ふう……」
(とりあえずこんなもんですかね……)
一息ついた時ふとあることに気がついた。
(ん……?何か体が軽い気がしましたがまさかレベルが上がったのでは……?)
そうだとしたらありがたいことだ。
新しい能力を身につけることでより効率的に攻撃が可能だと考えたからだ。
そう思い街へと戻ることにしたのだった。
冒険者ギルドに戻ってみると、何やら中が騒めいている感じがした。
(何だ?何かあったのか?)
気になった私は早速依頼を見てみることにして受付へ向かうことにした。
(この時間で結構人がいるな……)
そう思ったが気に留めずに近づいていくと、すぐにロゼさんが私を見つけてくれた。
「タクミさん、大丈夫だったのね!」
嬉しそうな笑みを浮かべるロゼさんを見て思わず見惚れてしまった。
(おっと、いけない。そうだ、依頼報告をしないとな)
「タクミさん……?」
不思議そうな顔をするロゼさんに私は慌てて声を掛けた。
「失礼しました、ちょっと考え事をしていたものですから……」
と誤魔化したところで気が付いたことがあった。
(冒険者の中にはこの騒ぎの正体を知っている人もいるだろう)
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