第7話
5日目(冬)
窓から差し込む朝日で目を覚ますと、私はベッドから降りた。
隣のベッドではカイル君がまだ寝息を立てている。
(やれやれ、結局あれからもカイル君は私に素顔を見せなかったな……)
そんなことを考えているとロゼが扉を開けて入ってきた。
「おはようございます、タクミさん」
「ああ、おはようロゼさん」
私は挨拶を返すと荷物の整理を始めた。
と言っても私の持ち物は日記くらいなものなのですぐに終わってしまった。
そんな私の様子を嬉しそうに眺めていたロゼだったが急に
顔を曇らせた。
「あの……タクミさん」
「ん?どうしたんだい?」私は手を止めてロゼを見た。
すると彼女は少し言いづらそうに視線を彷徨わせた後、意を決した様子で口を開いた。
「実は……カイルさんのことなんですが……」
(ふむ、やはり気になっているみたいだな)私は内心思ったが顔には出さずに話を聞くことにした。
「何か問題でもあったのかい?」
私が尋ねると彼女は首を振った。
どうやら問題があったというわけではないらしい。
(だがそれなら)
「カイルさんとタクミさんでタッグを組んで冒険者をするというのはどうです?」
と言い出すロゼさん。
「え!?私は何も経験のない人ですよ」
と慌てる私。
しかしロゼさんは首を横に振って否定の意を示した。
「タクミさんが何も経験のない方とは思えません」
(おいおい、買いかぶりすぎだよ)
私は苦笑いした。
「私は冒険者としての経験は皆無ですよ」
と再度否定するも彼女は聞く耳を持たない様子だった。
(困ったな……)
仕方なく私はカイル君に相談することにしたのだった。
「おっさんが冒険者になってくれるならこんな嬉しいことは無いよ。俺、近くの魔物討伐場所教えるよ」
いきなりですか!?
スパルタもいいところですよ。
経験ないと言ってるでしょう。
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