第3話 バレないように


「た、ただいま」


 と俺は動揺しながらの家へと入る。


 俺と水音みおんが入れ替わった後、戻ろうにしてもどうしようもなかったので今日は入れ替わったまま家に帰ることにした。


 津田水音みおん。俺のクラスにいる学校一の美女、津田音符おんぷの双子の妹。


 彼女は陽キャだから妹も陽キャだろ。俺は陽キャのふりをして過ごそうとした。


「おかえりー!」


 姉がスライディングしながら俺の前に立った。家ではこんなことしてんのかよ。


「ちょっと勉強で分かんない所あるから教えてよ」


 陽キャらしく返答するにはどうすれば……。


「うん!いいよ~!」


 お、これは上手く陽キャっぽくなったんじゃないか?


「どうしたの。今日明るいけどなんか嬉しいことでもあった?」


 何その反応!?逆に珍しがられた!?


「え……あうん。まあね」


「そ、よかったね!じゃ教えてよ」


「うん」


 あの人、普段家ではどんなふうに過ごしてるんだ?


「ここ!答え見ても全然分かんないの!」


 どれどれ?


 sin40°cos50°×sin50°cos°40の値を求めよ。


 ちょっと何言ってんのか分かんないな。


「分かる?まあこの前の数学満点だったし分かるでしょ?」


 あの人、数学満点なの!?姉と違って頭いい!


「えーっと、まあとりあえず計算してバーン!って求めるの!」


「なるほど!」


 え、今ので分かるのか?


「ていうか今日の水音みおんやっぱなんかおかしい」


 俺の方をじっと見て姉は言う。キラキラして可愛い瞳に吸い寄せられそうだけど、バレないか心配になってくる。この入れ替わりは俺と水音みおんだけの秘密にしたい。


「そ、そうかな?」


「なんか中身がまるごと誰かと入れ替わったみたい」


 

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