父の子
私は、その先へ手を伸ばすことができなかった。
「
声が震えたのは、笑ったせいだと聞こえただろうか。
「私は物語りに来たのです」
「どんな物語かしら」
彼女が身を乗り出す
幼い頃、彼女は継母から逃れて、
向かい合って座り、私の物語りを待っているのは、振り分け髪の(額の真ん中で黒髪を分けたおかっぱ頭の)幼い彼女なのではないか、そんな
私は、ささめく声で(ひそひそ声で)、物語りする。
「光る君の
「その物語は聞き飽きた~」
私は笑んで、続ける。
「
「
「
彼女に
子のいないことを話せば、
「ゆゆしきことを(恐ろしいことを)。」
彼女が言った。――
私に物語る
「
「明石の御方と、その男が通じていて、
「
私は
「このような暗闇の中では、
「っふ」
彼女の短い笑み声と、
「女を
「父が
「――『
その言葉を繰り返す彼女の声を聞いて、またも私は心遣いができなかったことを、思い知らされる。
ただ
「ですから、子を
「それでは、
言いかけた私をさえぎり、彼女が聞く。
私は、先ほどの父の
私が持って来た亡くなった
私が衛門督を夢に見たことを物語りすると、
私は物語りする。
「
「それは…衛門督様から、お聞きになったのですか」
彼女の声が、
「
私は今さら、自分の浅ましさに気付いた。
畏れに、
しかし今は、父(光源氏)は
准太上天皇(光源氏)から、太上天皇(朱雀上皇)の娘である
けれど、父は衛門督を咎めなかった。
先ほども、私が衛門督の形見の横笛を持って来ても、衛門督を夢に見たことを物語りしても、父は
父は、衛門督を咎められないのだ。
咎めれば、
父は
暗闇の中、彼女の
「
彼女の
私は、「母」を知らない。
私を産んで、母は
だから、正しく言えば、「子に言い聞かせている妻(
言うことを聞かない子に
「
「私のことは、聞いて下さらないのですか」
私は、彼女に聞き返した。
彼女が
「
彼女が言う。暗闇に
「私は、父に何ひとつ、似ていません」
「似ない
彼女は言い閉じる(断言する)。
「私が母ばかりに似たのは、」
「
「――ゆゆしきことを(恐ろしいことを)。」
彼女の
私の母(
男を見たことは、父兄弟しかない。
私の父と母は、
夫(光源氏)が
私の父が得た女として、妹を見ていたということもあるかもしれない。
それほど致仕大臣が、
私と妻(
しかし、妻(
「何ひとつ、
暗闇の中、彼女の声が聞こえる。
そう。彼女の言う通りだ。
そう思いながらも、私は言っていた。
「確かめてごらんになりますか」
「どうやって。」
彼女が問う。
「
私が、あなたの
私は彼女に言った。
「
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