咲耶さんは神霊君たちに振り回される。

猫野 尻尾

第1話:神様と人間のハーフ。

さて郊外の住宅街の一角に、ちいさな花屋さんがある。

花屋さんの名前はAnge Flor(アンジュフロール)

コンセプトは「天使の花屋」


その花屋さんにひとりの女の子がいた。

女の子は学校からの帰り花屋さんでアルバイトをしていた。

で、その彼女、実は普通の女の子じゃないんだ。


なんと彼女は男性の神様と人間の女性との間に生まれたのハーフ・・・半神なのだ。


彼女は父親は「天乃産巣日主命あまのむすびのぬしのみこと」と言って、

出雲大社に舞い降りてきていた時、たまたま参拝に来ていた人間の娘「さき」を見て一目惚れしてしまった。


ふたりは愛を育み、生まれたのが花屋で働いてる彼女。


そうやってたとえば神様とのハーフや妖怪とのハーフって、ひっそりと

人間の世界で生きているのだ。


半妖で有名な話ではキツネの化身である女性との間に生まれた安倍清明が霊力を

持ち陰陽師として活躍した話などがある。

その時代はキツネも神聖視されていたことから半神(神との婚姻ないし混血)も

あったようだ。


で、この物語のヒロインの彼女の名前は「木花 咲耶このはな さくや」と言う。

現在、桜庭さくらば学園高校に通う17才の女子学生。


彼女が神様と人間のハーフ「半神」だってことを知ってるのは花屋さんのご夫婦と

森に住んでる老婆だけ。


花屋のご夫婦は旦那さんが「春 晴一はる せいいち」さん、で奥さんが「春 菜花はる なばな」さん、

そして「陽毬ひまり」ちゃんって女の子が一人。


咲耶さくやは森に住んでる老婆の家から自転車で学校と花屋さんに通っている。


老婆の正体は神霊・・・いわば巫女さん。

彼女は咲耶の義祖母で教育係兼付き人。

名前は「雨乃 宇受売あめの うずめ」と言う。

神様は妖怪とも交流があり、老婆は若い時は雪女と争うくらいの美貌を誇った。


咲耶の両親は咲耶が生まれてすぐ別れてのち父親は神の国に帰っている。

母親の咲は病弱だったため咲耶を産んだあとすぐに他界していた。


咲耶は半分が神様なので不思議な術を使って四大神霊を召喚できる能力を

持っていた。


四大神霊とは・・・、


水をつかさどる神霊、水波乃比古(みづはのひこ)


火をつかさどる神霊、火耶那乃比古(かやなのひこ)


風をつかさどる神霊、風戸乃比古(かぜとのひこ)


土をつかさどる神霊、土夜乃比古 (つちやのひこ)


全員、男性の神霊。

神霊にはむろん女性もいるのだが、なんで咲耶に仕える神霊が男子かと言うと、

それは咲耶の美貌に惹かれて彼ら自身が召喚されることを望んだからに

他ならない。

それぞれ個性はあるものの四人とも超絶イケメン。


そのまま人間の世界にいたら人間の女子からモテまくりな存在だろう。


花屋の花は彼ら神霊に少しづつパワーを分けてもらって育てていた。

だからアンジュフロールの花は枯れずに長くもった。


そして咲耶は、もうひとつ特技があってそれは花と会話することができた。

毎日のように花の悩みや世間話、またちょっとした自分の悩み事を花に聞いて

もらったりしていた。


花屋さんとのつながりは、花屋の旦那さん春さんの祖母、享年亡くなった

祖母の「蓮華れんげ」さんと咲耶の義祖母の「字受売」《うずめ》さんが

若い頃から仲がよかったため・・・そのつながりで咲耶はアンジュフロール

にお世話になることになった。


その時点で春さんと春さんの奥さんは咲耶が神様と人間のハーフだと言うことを

「字受売」《うずめ》さんから聞かされた。


夫婦は納得して咲耶をバイトに雇った。


アンジュフロールに咲耶が来てくれるようになって切り花の寿命が長いって

評判の花屋さんになっていった。

とりもなおさず四大神霊のおかげだった。


そして問題はここから・・・ある日、アンジュフロールに「荷々木野 誠ににぎの まこと」って大学生の青年が花を買いにやって来た。


最初は花屋のお客として来た誠だったが、やがてごく自然に咲耶と付き合うこと

になる。


四大神霊はヤキモチ焼き・・・もともと咲耶に惹かれて彼女と仲良く暮らしてる

ところに人間の青年が現れたもんだから目が細くなる・・・いい気持ちはしない。

四大神霊たちは召喚もしてないのに勝手に現れては、なにかにつけ誠と咲耶の邪魔をするようになっていく。


つづく。

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