第16話 居眠りしていた王子様を落ちないように支えてあげたら、キスされてしまいました

な、なんでこうなった!

私は心の中で叫んでいた。


今、私は図書館にいた。


なんといきなり4限目の授業が休校になったのだ。


昼休みの終わりまで、暇になったのだ。


ライラと過ごそうと思ったのだが、ライラは自分の家の商会に少し連絡することがあるからと急遽外出許可を取って出ていった。


ヨーナスとアハティは剣の訓練場に行き、ハッリは図書館で勉強するからと図書館に行ったのだ。


一人になった私はどうしようかと悩んだ。


何か少し眠たい。

昨日も夜遅くまでライラに付き合わされたので、今日も眠いのだ。この二日間の寝不足を少し解消するためにどこかで昼寝したい。寮に戻ってもいいが、一度寝てしまったら起きられない可能性がある。それよりはどこかで昼寝できる静かな所があれば、良いんだけど……


そう言えば、私はこの前のオリエンテーションで本を探した時に、図書館の2階の隅に外から見えない丁度昼寝するのに最適の場所を見つけたのを思い出したのだ。


勉強するハッリの邪魔をしてはいけないと、ハッリには内緒で図書館に行ったのだ。そんな邪な考えを持ったのが行けなかったのかもしれない。


図書館は流石に4限目の授業中で人は殆どいなかった。


「あった、あった」

私は昨日見つけていたその隙間に入った時だ。


「えっ?」

私はそこで先客を見つけたのだった。


端で歪な場所なので、机が一つと椅子が2脚しかないのだが、その椅子の一つに生徒会長が凭れて寝ていたのだ。


日頃の激務が響いているのだろうか?

イケメンが寝ているのを初めて見たが、さすがイケメン、寝姿もかっこいい。

さすが殿下ともなると私と違って大口を開けてもいないし、よだれもたらしていない。

私は感心したのだ。


でもなんでこんなところで寝ているんだろう?

寝るならば誰にも邪魔されない執務室や生徒会室で寝ればいいのに!

私がそう思った時だ。


船を漕いでいた会長の体が大きく揺れたのだ。


「落ちる!」

私は慌てて手を差し伸ばした。


何とか間に合って会長が椅子から転がり落ちるのは防いだのだが、

でも、とても重い!


このままでは支えきれない。


でも、手を離したら絶対に会長は椅子から落ちて、起きてしまう。


ライラと下らない話をして起きていた私と違って、昨日もあの後遅くまでお仕事をされていたのだろう。


王子様は学生の間も学園のことだけでなくて、実際の王族の本当の仕事もしなければいけないなんて大変だ。私の見せてもらった書面は絶対にどこかの領地の会計報告書だった。あんなのを調べられるなんて会長は本当に凄い! まだ、それも学生なのに、さすが未来の国王陛下だ。


そんな会長のせっかくの睡眠時間を邪魔してあげたら可愛そうだ。


仕方無しに、私は椅子を持ってきて、会長の横に座ると会長が落ちないように支えになってあげたのだ。

もたれて寝ている会長の頭が丁度私の肩に当たって支えになるように。


でも、こんな体制では私が眠れる訳もない。


なんでこんなボランティアみたいな事をしなければいけないのか?

とも思わないでもなかったが、会長には昨日付き合ってもらった恩がある。


それに美味しいお菓子をごちそうになったし……

またお菓子をくれるって言っていたし……

決して私はお菓子に釣られたのではない!


まあ、普通はもう会うこともないと思っていたのだが、こんなところで出会ってしまって、私の肩を枕代わりにしてあげていれば、また、お菓子をくれると現金にも思ってしまったのも事実なんだけど……


それにしても良く寝ている!


私は会長の寝姿をまじまじと見てしまったのだ。


茶髪のウィル様とは違うが、会長も本当に見ていて惚れ惚れするほどのイケメンだ。

それによく見るとどこかウィル様に似ていた。


ウィル様もひょっとして王族の血を引いているんだろうか?


まあ、絶対に平民の私には叶わない恋だけど……


この学園にいればいいなと思ったけれど、今のところ会えていない。


会えたら、直接お礼が言いたかったけれど、いないのならば仕方がないか。


私がため息を付いた時だ。


「マイラ!」

会長が何か寝言を言った。


「えっ、何か言われました?」

私は思わず会長を見た。


会長は目をうっすらと開けて、そして私に抱きついてくれたのだ。


「えっ」

私はその瞬間動けなかった。


そして、何を思ったか会長は私の頬に


チュッ


とキスをしてくれたのだった。


ええええ!

私は完全に固まってしまったのだ。


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王子にキスされてしまったニーナ。

続きは今夜です。


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