第14話 お姉ちゃんの苦悩
◇◇◇
それから数分後――。
加賀に正座をさせられていた――加賀のお姉さんが。
あの後お姉さんは加賀に言われるままに、近くに置いてあったブレザータイプの学校の制服に着替えさせられた。
よく見れば加賀に似ていて、かなりの美人だが……今はそうも言ってられない。
なんせお姉さん……加賀のガチ説教中だからな……。
「…………」
「…………ぐすん」
お姉さんは泣きそうな顔で正座をさせられている。
ちなみに僕はお姉さんの隣に座っているが、加賀は別に僕には怒ってないらしく、普通にあぐらをかいてるし。
(いや……僕も正座をするべきじゃないかとは思うんだけど……加賀、僕が反省している風の空気を出すと怒るんだもの……)
「…………」
目の前には不機嫌そうに頬を膨らませながら仁王立ちしている加賀さん……おい、この角度だとパンツ見えなさそうなんだけど……いや、何でもないです……。
お願いですからにらまないでください。
「うぅ、さくら、許して……ちょっと、油断してただけなの。つ、次はこんなことないようにするからぁ」
「ふん、先輩を変態扱いするお姉ちゃんなんて知らない。ねぇ、お姉ちゃん。わたしさっきメール送ったよね? 人を連れてくるって……なんで? 裸で家を徘徊していたの?」
「えっ……えっと、着替えを持っていき忘れて……つい……そ、それに来るの女の子だと思ってたし……」
半べそをかいて、子供の様に謝るお姉さん。加賀とお姉さんは身長差が15センチ以上あるので、そのあべこべの説教風景はとてもシュールで言っちゃ悪いけど、とても面白いのだが……。
当事者としてはとてもいたたまれない……。
知らない男に裸を見られた後に妹にガチ説教……マジで同情する。
「まあまあ、さくらちゃんそのぐらいでいいじゃない?」
「むぅ、でも……でも……先輩がお姉ちゃんの裸を……」
その時、状況を遠目で見ていた烏丸が、加賀に歩み寄り優しい口調でフォローに入る。
しかし、それでも加賀の怒りは収まらないようで、そのまま僕に視線を向ける。
「先輩……ひ、ひとつ聞きたいんだけど……!」
「えっと……」
顔を赤くして「もうどうにでもなれー!」というかヤケクソ感がある……。
どうしよう、悪い予感しかしない……。
「先輩は童貞だから、女の子のおっぱい見たの初めてだよね!? わ、私が一番先に見せたかったのに!! 美恵先輩とも私の方が先に見せるって約束したのに……!」
「てめぇ! お姉さまの前でなんてこと言いやがる! 変なイメージが付くじゃねぇか!」
てか……僕、実は最大級のピンチなんじゃないのか……? 僕は二股のお試し期間の相手って言う頭のおかしい存在だ。
正直八つ裂きにされても文句言えない……。
(しかも……加賀の話や、文句も言わずに説教を受けてる様子から、加賀を溺愛しているのがわかるしな……)
「あ、あたしのことは気にしないで。えっと……高円寺さんだよね? さっきはごめんね? えっと……お見苦しいものをお見せして……」
僕がいつものマイナス思考に支配されていると……隣にいるお姉さんが優しくほほ笑む。裸を見られたというのに怒っている様子はない……なんてできた人間なんだ……少しポンコツ感がするとか考えていた自分を殴りたい。
「…………」
ん? ……でも待てよ。ここは気やすい感じを出してお姉さんとの距離を縮めるチャンスなんじゃないのか?
だって二股のお試し期間なんていうかトンデモ状況だ。加賀のためにも味方は多い方がいいだろう。いくら加賀でも家族にはお試し期間のことを話してないだろうし。
今のうちに地盤を固めておくのは悪い選択しじゃないだろう。
よし……。
「いえいえ、とてもいい物を見させてもらいました。よくを言えばもっと胸が欲しいですねっ!」
「なっ……!」
胸を押さえながら顔を赤くするお姉さん。その姿はなんかエロいです……。
いい物を見れた気分だが……しかし、その代償は大きかった……。
「先輩。さいてー……」
僕の策はとてつもなく裏目に出たらしい。
とてもじゃないが彼氏(仮)に向ける視線じゃねぇ。まあ、気持ちはわかる。僕も僕がいたらそんな視線を向けるだろう。
「高円寺君。悪ふざけが好きな私でも言っていいことと悪いことがあると思うなぁ~。くすっ、というか、君ってちょいちょい地雷踏みたがるよね? ドM?」
「うるせぇ。この状況で楽しそうに笑ってるやつに言われたくねぇよ……。はぁ、コミュ障が余計なことを言うもんじゃないな……。お姉さんすみません……怒ってますよね……?」
「ん? お姉ちゃんが先輩を怒るはずないじゃん!」
「だって……その……」
僕はちらっとお姉さんを見る。すると……ふわっとひまわりの様に優しく笑う。
「ああ、大丈夫。二股のお試し期間の件はさくらに聞いて知ってるから」
……えっ? マジで……? 加賀……お前身内になんてことを話てるんだよ……。
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