第3話 彼女様のお出迎え
◇◇◇
人生を変えるできごとが起こった次の日。
季節は6月に差し掛かり、段々と暑くなってきた空気を感じながら、僕は通学路を歩んでいた。
学校も近いこともあり、周りには同じく通学中の生徒たちが何人かいた。ボッチの僕とは違い友達との会話を楽しんでる人が多い。
『おい、お前今日テスト勉強ってしたか?』
『ねぇねぇ、サッカー部の先輩にチョー恰好いい先輩がいるんだけど、後で見に行かない?』
毎日の景色の筈だが……昨日のことを考えて歩くと見える景色が変わったようだ……はぁ、嬉しいような今後のことが不安のような……複雑な気持ちだ……。
い、いや、美少女2人と二股のお試し期間とかいう確変中なのだから、喜ぶべきだろう……
「…………………」
でも、なんかいけないことをしている罪悪感がすごい「お前何美少女を2人たぶらかしてるんだよ!!!」と、刺されたらどうしよう……
(でも、あの2人……昨日は『うまく話せた』のかな……?)
あの後、名前だけの自己紹介のあと、加賀が「女のふたりでお話したいんです! 先輩は今日帰宅で!」っと言い出し、ファミレスを追い出されてしまった……。
まあ、こちらとしては仲良くやってくれればいいと思うので、文句はないが……あの2人仲良くやれるのか……?
性格は真逆な気がするけど……。
「……?」
あれ? 学校が近づいてきたら……人から見られている気がする……
僕が見るとみんな視線を逸らすし……なんか興味本位で見られているような感じだ。
「…………」
僕は特徴がないし、注目されるような人間じゃない……昨日までは。
心当たりはある……が、僕の気のせいかもしれない。
うむ。大きいできごとがあったから周りの言動に過敏になっているのかもな……。
◇◇◇
そう思っていた時期が僕にもありました。
(き、教室に居づらい…)
窓際の1番後ろの自分の席に座っていると……明らかにクラスメートに見られている……
周りを見渡すとみんな僕から視線を外す……親しい人がいないので誰も話しかけてくる気配もなく、まるで腫物を扱うみたいだ……。
き、昨日件が知られてるのか……そうとしか思えない。今日はおとなしくしていた方がいい――。
『せんぱーい! 会いに来ちゃった!』
そんな考えとは裏腹に元気な声が周りに響いた。
その声にびくっと反応してしまう……
それはそうだ……大人しくしていようとした矢先に爆弾みたいな少女、加賀がやって来たんだから……。
加賀は教室の入り口で僕に向かって手を振っている。
『お、おい、あれ誰だ?』
『先輩って言ってるから1年じゃないか? 可愛い子だな……誰に用だろう……』
クラスメートの人たちも加賀のことは知らないらしく、目を丸くして見ている……。
まずい……明らかに僕に用があるんだよな……ここは知らないふりをすべきか……そうすれば加賀も空気を呼んでくれる……か?
そ、そうだな……加賀も騒がれるのは嫌なはずだし……この作戦で行こう。
「もうっ! 無視しないでよ!!! 彼女を無視するなんてどういうこと!」
空気読むスキルなんて微塵もなかった! それにお試し期間中じゃなかったでしたっけ!?
加賀はズンズンと教室に入ってくる。
「ねぇ、聞いてるの? 今日お昼一緒に食べたいんだけど」
「お、おお……」
俺が生返事をすると、加賀は嬉しさを隠しきれないといった感じで照れたように笑う。
「えへへ、嬉しいなぁ。じゃあ先輩、美恵先輩にも伝えておくねっ!」
加賀は笑顔でそう言うと颯爽と去っていった。
まるで台風みたいなやつだな……感情がわかりやすくて明るいから、見ていて気持ちがいいけど……今はそれよりも……。
『ね、ねえ、今の高円寺君の彼女? 可愛い子だったけど……』
『はっ? あれが彼女だと……高円寺は烏丸さんと付き合ってるって噂じゃ……』
『……ロリコンシネ』
おい、最後のやつ普通に怖ぇよ! 色彩を失った目で見るな!
はぁ……これ以上変な噂が広まらないように、2人には目立たないように言った方がよさそうだな……俺が刺される可能性が出てきたし……
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