第2話

 作業部屋から出ると貯蔵庫より干し肉を出してかじる。これは父が崖下で仕留めた魔物の肉らしい。

 魔物を丸々崖上に運べないため、血抜きした後、食べるに困らない分を切り取り、崖上で干すのだ。

 

 干し肉をかじりながら小屋の外に出ると星がひとつ我先にと出ていた。直に真っ暗になるだろう。そうすれば無数の星が、花畑のように夜空を彩るのだ。

 

 私は空が好きだ。

 夜空が好きだ。


 長い長い髪に、月明かりが優しく落ちてくる。

 長い長い髪は、月明かりに呼応して星が瞬くように煌めく。

 

 漆黒の髪は、金にも銀にも見え、また赤にも青にも黄にも緑にも紫にも、色を変えて見せる。


 十分に月の輝きと星の瞬きを浴びた髪に櫛を丁寧に通す。すると髪の上を星の子が跳ねる。

 無邪気な笑顔で楽しそうに弾む、たくさんの星の子。それを片手で掬うと巾着袋に仕舞い、口を閉じて紐を結ぶ。


 これは透明な液体を作るための大切な材料なのだ。


 ひと仕事終え、私は仰向けに転がると大きな欠伸をもらす。


 父は今晩は帰って来ないだろう。

 反物を売りに行った日は、得た金で酒を飲み、朝になって帰って来るのが常だ。


 目を閉じればすぐに夢にいざなわれる。

 今日はもう寝よう。明日は草を取りに行かなければ……。

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