ゲーム配信回ですわー!


「こんカロナー。こんカロナ~! いつかお嬢様になりたい系B-Caster、竜胆寺りんどうじカロナですわー! 今日はゲーム配信ですわよー」


 と、ゴージャスなホテルのような部屋を背景に配信が始まる。

 『バトルキャストダンジョンアライブ』では、ダンジョンを攻略する配信が主ではあるが、それ以外にもゲーム配信等をすることもできる。そうやってフォロワーが増やすことで、より有利にダンジョン攻略が行えるのだ。


 具体的なところでは、フォロワー数が一定に達すればスパチャポーションが解禁され、視聴者が配信者のHPを回復する支援ができるようになる。(スパチャは、「スーパーチャンス」の略であり、配信の壁を越えてチャンスを届けるという意味合いらしい)

 純粋に投げ銭としてもよい。資金は装備に回すこともできるし、生活費にもなる。


 なので人気B-Casterは、もはやダンジョン攻略をしなくても食べていけるレベルという本末転倒なことも起きたりもしているが――まぁ、それはそれ。



「本日プレイするゲームは、レトロゲームアーカイブより――こちら! 風来のツレソですわー! ローグライク系の名作ですわね!……ああ、秘書AIがいれば、サムネイルとかも自動で作ってくれたりするんですっけ? 早く買いたいですわぁー」


”こんカロ。お、ツレソか。いいね”

”こんかろー。……ツレソがレトロ……うっ、心が……!”


 レトロゲームアーカイブ。それは月額500円で過去の名作ゲームを遊び放題、配信も可能という配信者にとって心強い味方だ。ゲーム自体のファンが見に来てくれることも多く、零細B-Casterにとってはありがたい動線だ。


 しかも『バトルキャストダンジョンアライブ』のVR空間内ではテレビとゲーム機、コントローラーまで再現されており、プレイする様子もゲーム画面と並べて配信に載せることもできる。

 カロナとしても本物のゲーム機を遊んでいるようで、結構お気に入りだった。



「お、皆さま来ましたわね。じゃ、ゲーム開始していきますわよー。……しかしゲームでダンジョンを攻略するならダンジョン攻略配信の方が良いのでは? なんて言われそうですわね。そこんとこどうなんですの?」


”大丈夫、2Dドットゲームは完全に別腹”

”たまには配信者生命の掛かってない平和な配信が見たい”

”初見。ツレソと聞いて”


「初見さん! いらっしゃいませー! 今から開始するのでぜひ見ていってくださいまし!……お、なにやら可愛らしいオコジョ。これ仲間ですの? いいですわねー、BCDにもペット実装されないかしら。たまにスライムとかクッションにして愛でてみたくなりますのよね」


”先日盛大にゴルフボール扱いしてた人がなんか言ってる”

”切り抜き見ましたよ? スライムに謝ってどうぞ”


 視聴者のコメントに反応しつつ、配信を進めていくカロナ。先日の切り抜きも視聴数結構あるらしく、多少の収入があるのではと期待していたりもする。

 さて、ゲームの方だが――


「……この『ファイの問題』ってのは、つまりパズルですわね。苦手ですわー」


”本業のダンジョン配信でもっと難しい謎解きやってるのでは?”

”初見さん。このお嬢様、そんな難しいダンジョン行ったことないんだ……”

”ああ。そういやいつもリドル系ダンジョンはさりげなく避けてるよな”


「じょ、常連のカロナイト様が何か仰ってますが気にしないでくださいましねー?」


 と、視聴者にからかわれつつ、攻略していく。

 他にも無駄に歩き回って気が付けばHPが限界ギリギリになっていたり。


「やっべ。空腹で死にそうですわ!? なんなんですのこの満腹度ってシステム!!」


”あるある。歩き回ってると死ぬよー、おちついて”

”腐ったサンドイッチ食べるといいよ”


「そうですわね落ち着いて……いや騙されませんわよ!? 腐ってますわよねぇ!?」


”でも食べないと空腹で死ぬよ? 満腹度少し回復するし”

”そうそう、まぁ運が悪いと食べても死ぬけど”


「くっ……空きがあったから持ってたけど、背に腹は代えられないということですわね。ここはツレソの胃腸の強さに賭けますわ!…………あー!! 死んだーーー!?」


”ワロタwww もってんなお嬢www”

”そこでダメージ効果引く!?www 先に薬草食べてからが正解だったなぁ”

”並走してて俺も食ったけど、こっちは力3ポイントダウンだったわwww”


 攻略のアドバイスをもらったり、それを生かせなかったり。

 逆に配信者としては見所で美味しい、なんて思ったりもしつつ。


 そんなこんな、楽しくゲームを遊んでいくカロナだったが、気が付けば予定していた時刻を10分程過ぎていた。


「あっ! しまった、もうこんな時間ですわ! 急がないとタイムセールが……んん、げふん。今日はこのくらいにしておきますわね。それでは皆様、また見てくださいまし。チャンネル登録高評価よろしくお願いしますわね、おつカロナー!」


”おつカロナー”

”おつカロナー。お嬢、次はクリア耐久しましょう”

”乙。ダンジョン配信も見てみるよ”


 配信終了。急いでログアウトしてタイムセールに向かわねば――

 と、カロナはそこでひとつ気が付いてしまった。


 普段のダンジョン配信よりも人が多かった。というか、最多同時接続数を更新していた。

 コメントせずに視聴だけしているいわゆるROM専の視聴者も含めて、配信に27人も人が来ていたのである。そしてチャンネル登録者数が5人も増えていた。


 どうりで反応が多く、なんか楽しいと思った……!!


「もしかして私、ゲーム配信者の方が向いてるのかしら……?」


 と、カロナは少しだけB-Casterとして心が揺らいだのはここだけの話。




――――――――――――――――――――――

(チャンネル登録(ブクマ)・高評価(★レビュー)、よろしくですわー!!)

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