売ったお金の有効利用
◇
十分も走らずに目的の大型家電量販店に着いた。
キャンピングカーを降り、店に入ってすぐ売ってる場所を確認して一直線に二階へ向かう。
「あった、あった」
買おうと思った目的のものを見つけた伊吹は、早足で近づきタブレットを手に取った。値段も一万円台から四万円台と色々あるんだな、と思いながら、値段と一緒に表示されている性能も確認する。今までスマートフォンで事足りていたが、タブレットだとどのくらい性能があれば充分なんだろうか。眉間にしわを寄せながら難しい顔をして考えていると、少し遅れて来たビャクが伊吹の後ろから覗き込みながら「これなに?」と聞いてきた。振り返り答える。
「タブレットだよ」
「タブレット?」
「あぁ、ネットで調べたり、本読んだり、色々出来る」
「それって伊吹が持っている電話とどう違うの? あれで色々調べてるよね?」
どう説明すべきか考えるも、うまい言葉が浮かばない。伊吹だって画面が大きいということくらいしか分からないのだから。それでも、タブレットを買おうと思った理由があるのだ。だから、それを伝えることに決めた。
「ラーメン屋さんや美味しいご飯、食べたいものをビャクやナギが直接調べられるようにだよ」
いたってシンプルな理由。
これがあったらきっとビャクとナギとの旅は充実するし、伊吹が気になる視点と違う物の見方で新たな食べ物を提案してくれるかもしれないという打算もある。
お互いにとってプラスになるし、それにビャク達と過ごすと決めてロードバイクを売ったお金の使い道として一番最適だと思ったのだ。
伊吹の言ったことに驚いたビャクは伊吹の背中にぶつかった。
「うおっ。どうした?」
後ろから手を伸ばして来たビャクは、タブレットを持ち上げた。
「これで調べるの? 僕が?」
「あぁ。ビャクとナギがな。ナギのために何か棒でタッチできるようなもの作らないと、ナギが触れるのかは微妙だけど。ほら、あいつ人間の様に指紋あるかわかんねぇから」
「僕とナギ用? わぁー。すごい、すごい」
嬉しそうに喜ぶ姿を見て、自分の決断は間違ってないことを知る。あとは、どれが触りやすいかを決めてもらうだけだ。結局、スペックとか分からないし、調べ物で主に使うならインターネットに繋がるだけで問題ないだろう。
「どの大きさが見やすいかだな。ナギはテーブルに置いて触ればいいから、ナギのことは考えなくていいと思うぞ。ビャクが使いやすければいいと思う」
大きい方が三人で見れていいよね、と大きさと持ち上げた時の重さを確認しながらタブレットを吟味しているビャク。その中から「これに決めた!」と、タブレットを指差す。それは、十一インチのタブレットだった。
WiーFiモデルで、約四万。元々ポケットWi-Fiを持っているからインターネット環境は問題ないだろう。伊吹はスマートフォンを持っているから、主な使い手はビャクとナギ。そのビャクがこれがいいと言っているのなら、問題はない。
「じゃあ、これを買おう」
先程入手したばかりのお金をレジで出す。ロードバイクを売った四万六千円のほとんどがタブレット代金で消えた。あんなに金額に落ち込んでいたものの、有意義な買い物が出来たからかお金が惜しいとか出し渋りをするとかは、一切なかった。
店員からタブレットを受け取り、ビャクに渡す。今にも飛び跳ねそうな勢いのビャクに自然と口角が上がる。
「今からこれ使って行くラーメン屋さん調べるの?」
「あー、それはまた今度だ。初期設定してないし、使い方もよくわからないだろう? 今回は俺が聞いたことのある店で、カップラーメンになったこともある店を探すから、我慢してくれるか」
「わかった。じゃあ、次は僕とナギで調べるよ」
キャンピングカーに戻り、ビャクは早速ナギに購入したものを見せた。ナギも興味深いのか、早く箱を開けろ、ビニールを取れとうるさい。嬉しがる様子を見て、自分の選択は間違ってなかったのだと、胸を撫で下ろすのだった。
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