魔法剣士世界の水魔法使い、ウソつきを海に沈める
@futami-i
入学式と剣の乙女
第1話 どうせなら、おもいっきり
「私と勝負をしましょう! 剣の手合わせをおねがいします!」
明るい声の女の子が、僕の目をまっすぐに見て言った。
死んだ目の僕には、まぶしすぎる輝きで、女の子は微笑む。
「私には夢があります。誰よりも強い魔法剣士になる夢です」
僕には夢なんてない、やりたいことなんてなにもなかった。
信じられるものはなにもなく。
信じたそばから裏切られるばかりの、バカバカしい人生だった。
なのに、この女の子は僕をまっすぐに見つめて、言う。
「私はこの夢を、あなたにも信じてほしい」
あまりにもあけすけな彼女の笑顔。
ほだされた僕は、たずねてしまう。
「信じたくないって、言ったら?」
「信じさせてみせます! 私の剣と、私の――“強さ”で!」
僕は水の魔法が使える。
最初はこいつを水に沈めてやろうかと思ったけど……
僕は笑って、剣を手に取った。
水の剣、圧縮された水で形作った水圧の刃だ。
単純バカだって笑うかい? ああ、僕は単純バカだな……
でもどうせなら、どうせなら。
どうせなら、僕はおもいっきり、自分にウソをついてみたいんだ。
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