第93話

◆メタルもちりん三十匹!?!?

◆多すぎんだろ……

◆※出現確率三パーセントくらいのレアモンスターらしいです

◆ゲーム世界でもサクたんは強ぇんよw

◆これでレベリングし放題だなァ〜〜!!

◆動物に好かれまくる体質すごすぎだろ

◆でもどうやって勝つんだ?


 BGMがカッコいいものに変わり、モンスターの上に緑色の体力バーが見え始めた。

 その場から動くことはできなくなっていたが、半透明のプレートに「戦う」や「逃げる」などの選択肢があったため、どうやら行動を起こすことができそうだ。


「め、めめめ、メタルもちりんですってぇえ!? しかも三十匹ぃぃい!?!? ぶくぶく……」

「……ラプソディーは白目向いて気絶したから使えないね。わたしもターンじゃないから動けないし……さくたん、何か行動してみたら?」

「あ、うん。そうだね!」


 あまりの衝撃だったのか、彩芭さんは泡を吹いて気絶をしてしまう。

 ルハに提案された通りにプレートをタップして戦おうとしたのだが、攻撃の名前が僕の神経を逆撫でするようなものであった。


「【超貧弱枯れ枝パンチ】か【超貧弱もやしキック】って……。何、これ」


 あまりに僕を舐めている攻撃名だったが、僕のパンチやキックを言語化したらこのようになるだろうなと納得してしまった自分もいて悲しくなる。

 とりあえずその現実を受け入れて【超貧弱枯れ枝パンチ】をタップしてみた。


「そいやー!!」


 すると一匹のメタルもちりんの前まで体が動き、ぺちっ……とゼロに等しい大きさの音でパンチをする。


〈メタルもちりんAは999のダメージを受けて尊死とうとしした!〉

〈周りのメタルもちりん十九匹も巻き添えを食らって尊死した!〉


 ボシュンッと音を立てて、一気に二十匹のメタルもちりんが姿を消した。


「おぉ、なんかよくわかんないけど倒せたよ!」

「うん、流石はさくたん。わたしもソレを食らってたら命の保証はなかったと思う」

「はっ!? お、思わぬ出来事で気絶してたわ……。あれ、なんかメタルもちりんが一気に減ってるわね」


 後方で腕を組んで満足げな顔をしているルハと、ようやく意識を取り戻した彩芭さん。

 兎にも角にも、残り十匹ほどまで減ったからよし!


◆ふぁっ!?

◆ファーーーwww

◆攻撃力なかったはずじゃ……?

◆魅了がカンストしてるから、推しに触れられて尊死したってことやろ

◆モンスターも尊死するんだ(笑)

◆なんでもありじゃんよww

◆俺だったら推しに触れられたら爆散するね

◆サクたんクソ弱いのにクソ強ぇえええ!!

◆魅力と幸運に極振りするとこうなんのかぁ……w


 僕の行動が終わればルハたちの番がくると思っていたのだが、どうやらそれより先にモンスターが行動らしい。

 耳に響いてくるアナウンスを聞き、攻撃に備える。


〈メタルもちりんたちのターン。メタルもちりん一同は【】した!〉

〈バトルに勝利した! 三人は経験値を69540ポイント獲得した!〉


 倒し損ねたモンスターたちは、一匹残らず姿を消す。モンスターとの白熱したバトルなんかはなく、呆気なく戦闘は幕を閉じた。

 とても多そうな経験値を獲得したが、僕の異能という名の体質が影響で一レベルも上がることはない。涙はぐっと堪えた。


「そそそ、忖度ぅーー!? そんな技知らないんだけれどっ!!? あれ……もしかしてサクたんってとんでもない人物なのかしら……?」


◆今更すぎるww

◆こいつ生粋の馬鹿だろ

◆ボスの威厳は何処へ……

◆↑元からねぇだろうよ

◆無知無知で可愛いね♡

◆ってかモンスターの技なんなん?w

◆敵キャラが忖度するRPG知らんぞ

◆経験値七万って序盤で手に入れていい数じゃねぇだろがい


 せっかくならゲームみたいに楽しみたかったけれど、死んだらどうなるかわからないし慎重に進めるのが良さそうだ。


「レベルがもう四十くらいまでいった。スキルもなんかいっぱい出てきてるし」

「ワタシのスキル……全部頭に『聖なる』がついてる……。漆黒とか邪悪なるとかが良かったのにぃぃ……!!」


 二人がプレートに釘付けになってる間は暇だなぁと感じていると、先程倒した……というより自分から倒れたメタルもちりんたちがのそのそと僕のもとにやつてきた。

 つぶらな瞳で僕を見上げ、何かを訴えかけている。


〈メタルもちりん(三十匹)が仲間になりたそうにあなたを見つめている……。仲間にしますか? YES/NO〉


「忖度したことはちょっとムッとしたけど、僕のためにやったことなんだよね? じゃあイエスで!」


〈メタルもちりん(三十匹)をテイムしました!〉


 メタルもちりんたちはぷぅぷぅという鳴き声を発しながら僕の足にすり寄り、喜びを全力で伝えようとしてきた。

 僕は着々と仲間を増やして、ルハはレベルを上げて手数を増やし、彩芭さんはみるみる勇者に近づいていていい感じだね!


 幸先のいいスタートを切れたと感じ、僕らはこの世界からの脱出を目指して歩みを進めた。



[あとがき]


じっくり進めようかなとも思ったけど、サクたんがいる時点で不可能じゃんねと気がついた。

ってことでね、ハイテンポなRPG始まるよーー!

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