第88話

:はい?

:えええええええ!?!?

:ドンドンドン、ドン引き〜♪

:サクたんはね、やることなすこと全部めちゃくちゃなのがいいんだよ

:手始めに大氾濫スタンピード起こす奴があるかーー!!

:えぐすぎwww

:世界滅亡RTA、はっじまったよ〜〜w

:これが同じ国にいたってマジ??

:正直ちょっと舐めてたよ……

:声だけで大氾濫スタンピードを!?(英語)

:日本はやはり魔境だ(英語)

:Xランクに挑むに値するね(英語)

:さっき大したことないって言ったコメント出てきなよw(英語)


 掛け声をかけると大氾濫スタンピードが発生し、街は一瞬にして破滅へと進む。あらゆるところで火が立ち上がり、ピーマンたちの断末魔が聞こえてきた。

 警察らしい人や探索者らしい格好をしたピーマンが応戦しているが、圧倒的に数の暴力の前には虚しき抵抗だ。


「この国はもう時間の問題だね。次の国に移動しっか。おいで、厄災を運ぶ青い鳥――〝霹靂鳥ハタタドリ・ピー助〟」

『ピィーーッ!!』


 鍵を使ってピー助を呼び出し、背中に乗ってこの国を後にする。

 眼下では街が火の海になっており、僕に気がついた魔物たちはこちらに手を振っていた。


「さて、次はどの国に行こうかなぁ」


:一瞬で壊滅してて笑えん……

:日本はダンジョン大国。ドァーユー、アンダースタンド?

:理解できぬ……というか理解したくねぇ

:サクたん怖すぎww

:次のターゲット探し始めた

:なんてことだ、もう助からないゾ♡(ガチ)

:せめて一思いにやってやろうぜ


 ピー助に乗りながらそんなことを考えていたのだが、不審な音が近づいてきているように聞こえた。


 ――ブロロロロロ!!


「あー……同盟関係の国とかがいるのかな?」


 武装したヘリコプターが数機飛んでおり、僕らを捕捉して照準を合わせようとしている。次の瞬間、取り付けられていた重機関銃から弾丸の雨が放たれ始めた。

 ここでピー助に放電してもらっても、僕が乗ってるせいで全力は出せないだろう。別の子を呼ぶしかなさそうだ。


「ハナちゃん! 三秒止めて!!」

『っ!!』


 胸ポケットにいたハナちゃんに合図をすると、桜の花が輝き始めて時間が止まる。その隙に再び、鍵を使った。


「来て、嵐の神――〝リュウランカゲロウ・シナツ〟!」


 ドラゴンのような巨大な昆虫であり、緑色の体色に風を纏っている。

 ちなみに家にはまだアリジゴク状態の赤ちゃんがおり、砂漠ゾーンですくすくと成長しているのだ。シナツのように成虫になるにはまだ時間がかかりそうだが、自分のペースで育ってほしい。


「シナツ、あれ全部吹き飛ばしちゃって!」

『ギィィ……!!』


 シナツが口を開けると同時に周囲の空気が荒れ始めた。ピー助は問題なく飛んでいるが、ヘリコプターとなればそうは問屋が卸さないだろう。

 ハナちゃんの時間停止が終わると同時に、ヘリコプターが大きく傾く。弾丸も飛んできているが問題ない。


 ――ビュォオオオオオッ!!!


 シナツの口から突風が吹き、弾丸を無力化する。それだけでなく、全てのヘリを吹き飛ばす……ことはなく、ズタズタに切り刻んで爆発させた。


「おぉ! やっぱりすごい風だね〜」


:ファーーww

:武装したヘリが一瞬で壊されてる……

:えぐすぎィ!!

:これがサモナー(魔王)か

:初見よ、これがサクたんだ

:なんだいあの魔物は!?(英語)

:バケモノだ……(英語)


 さっきのヘリはかなり重厚そうなものだった。あんなのが沢山ある国となると、早めに潰しておいた方が動きやすいかもしれない。

 そう思い、ヘリが来た方向に向かってピー助に飛んでもらう。

 しばらく空を飛んでいると、あからさまに厳重な国家が目に入った。


「戦車に大砲、他にも色々……。早めにきて正解だったかな。よっ!」


 遥か上空で飛行しているピー助から降り、鍵を使う。


「来て。揺らめくは手向けの焔――〝九尾黒狐キュウビクロギツネ・伏見黒狐〟」

「ふっふっふ……呼ばれて飛び出て儂、参上なのじゃ!! ……ってなんで落下しとるんじゃぁあああ!?」


 元気いっぱいな状態で飛び出してくるが、落下に気がついて絶叫し始めた。


「細かい説明は後! 黒狐、とにかく周囲一帯を真っ暗にできる!?」

「フム。儂の焔は実体を持つ幻影を出すもの故、光を包みこんだりなくしたりするのは容易じゃ。サクたん、儂の背中に捕まっておれ!」


 ボフンッと音を立てて大きな狐状態に変化し、紫色の炎を地面に放つ。

 炎はたちまち街の光を奪い、真っ暗闇が広がった。言い換えれば、となったということだ。


だよ――〝ウオカゲ〟」


 全てが影に包まれた真っ暗闇に、山のように大きな影が隆起し始める。その影は炎のように揺れ、唸り声とギラギラした瞳がこの街の住民を震わせた。


『ガァァアアアアアアーーッッ!!!!』


 手始めに、この国の巨大な城が一口で丸呑みにされる。


『な、何ピマかこの化け物は!?』

『し、城はどこピマか!?』

『一瞬で全てが影に飲まれピマった……』

『撃て! 撃つピマーー!!』


 戦車や銃で応戦するピーマンだが、地面の影から何千もの影が伸びて触手のように動き、悉くを破壊していた。

 家も人も、武器も何もかもを破壊して飲み込み、ものの数十秒でこの国は壊滅する。


:…………(絶句)

:サクたん、敵にならないでくれよな?

:何も見たくねぇ……

:何も……見なかったZ

:ここはBADエンドの世界線だな

:【速報】武装国家、約四十秒で壊滅!

:人類の味方でよかったと心から思うよ(英語)


 念には念をということで、空の対策をしておこう。ヘリコプターとかで来られたら結構面倒だしね。


あま御空みそら獣王じゅうおう――〝叢雲獅子ムラクモシシ・マシュ丸〟」

『がう?』

「マシュ丸。もし変なのが飛んできたら、そこにいるピー助とシナツと一緒に撃ち落として欲しいんだ」

『がおぉ!!』

「よしよし、良い子だね♪」


 霹靂鳥ハタタドリ叢雲獅子ムラクモシシ、リュウランカゲロウもいるから空の心配は大丈夫だね。

 次の国に行こう。



[あらすじ]


淡々と国を滅ぼしてゆくサクたんの配信です。

ちょびっと出てきた幻獣たちの活躍回や、異名紹介回でもあるぜ!

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