第43話

 冷凍室から抜け出し、毛布で駆動さんを包んだ後に次のゾーンへと移動する。次に行く場所は暑いため、五匹のベイブペンギンたちも一緒だ。

 家の中を少し歩き、一つの扉の前まで行き、そこを開ける。


「……今度はクソ暑ぃじゃねぇか……」

「冷えた体に効きますよね!」

「サウナ配信でもしようとしておるのか?」


:マグマゾーン来たーー!

:あの時の配信の伏線回収されたなw

:これは確かにマグマの部屋だな

:ダンジョンと同化ってすげぇんだなww

:火事にならない? 大丈夫?

:リア凸する間抜けな奴はここで焼けるんだぁ……

:サクたんの家終わってる(褒め言葉)


 マグマの部屋は、他の部屋と比べると見るからにペットの数が少ない。なので、この前の赫岩龍カクガンリュウは喜んでこの部屋に迎え入れた。

 部屋に入るや否や、とてつもない熱風が僕たちを襲う。ペンギンたちが防いでくれているから少し涼しくなっているので、そこまて苦ではない。


『グルルァア』

「グラン、元気?」

『グァ!』


 赫岩龍のグランは嬉しそうに尻尾を振り、ベチベチと地面を叩いて揺らしている。


「あ゛ー……これは俺でも知ってる幻獣だな」

「それなりに有名じゃからのう。……というか貴様、露出が多いぞ。癪に触る」

「暑いんだよ……。つーか尻尾燃えてるけど大丈夫なのか?」

「む? ぬわぁーーっ!?!?」


 楽しそうに騒いでいる二人だが、それを聞きつけてなのか、沢山の鳥たちか集まってきた。

 野球ボールくらいの大きさで、ふっくらとしている黒い羽毛に包まれ、つぶらな瞳を持つ小鳥だ。


:可愛い……(消滅)

:これも幻獣なんですか!?w

:黒いシマエナガやんけ!

あまみやch:我慢できない今から向かうわ

:まずい、あまみやちゃんが向かった。逃げろww

:案件の仕事中じゃなかったっけ?w

:黒狐たん尻尾燃えててそれどころじゃねぇな

:ザ ・ 不 憫 枠


「うぅ……儂の尻尾の先端がチリチリになってしまった……」

「クロコ、説明お願い!」

「はいはい、わかったぞ。えー、これは〝カザンエナガ〟じゃ。危険を感じると自爆するが、自分たちは全く傷つかないから問題ないぞ。しかも、一匹が爆発すれば連鎖するのが危険じゃの〜」

『ピッ』

『ピピピ』

『ピ?』


 両肩や頭に乗り、首を傾げながら囀っている。頰にぴったりとくっついてもふもふを感じられるが、ここで爆発されたら普通に死んじゃうな〜と、心の中で笑った。

 ……なぜだか、天宮城うぐしろさんの〝プレッシャー〟が伝わってきた……。怖いなぁ。


:エナガはダメだよ……可愛すぎる……

:海外ニキが羨ましがってるくらいだもんなw

:一匹ください

:↑黒焦げの貴様の姿が目に浮かぶぞw

:さっきからあまみやちゃんの音沙汰がないの恐怖

:迫り来るあまみや……ヒエッ

:あまみや「モフモフ……♣︎」


 リスナーさんたちも不穏な空気を感じ取っているみたいだが、今は配信に集中しよう。

 次のペットを探しに行こうとしていたのだが、どうやらあっちから迎えにきてくれているみたいだ。


 奥のマグマの海がどんどんこちらに侵食し始め、寸前でそのマグマの中から巨体が現れる。


「熱ッッついのじゃ〜〜っっ!!!!」

「そんなに前に出てるからでしょー?」

「クソ暑い……もう一枚脱ぐか……」


 その巨体は漆黒の肌をしており、背中あたりからマグマを噴出しているクジラだった。


「〝黒燎原鯨コクリョウゲンクジラ〟。マグマを泳ぐクジラじゃ。近くにある岩などを溶かしながら進み、泳ぎながらそれを食べるやつじゃな」

「岩食うのか……」

「美味しいのかなぁ」

「絶対やめるのじゃ」


:早まるなサクたんww

:ほら、バナナあげるから、ね?

:バナナで釣れるとでも……いや、釣れるなぁ

:にしてもデケーな

:マグマゾーンの幻獣は災害そのものじゃね?w

:エナガちゃんだけが癒し

:ってか駆動さんの服装エグいてぇ!!!

:配信大丈夫か?ww


 このマグマゾーンの中だったら、この子かグランが一番強いだろうし、ここも終わりでいいだろう。

 駆動さんはもうお終いにしたいらしいけど、まだまだ紹介しきれてないから黒狐と二人で家を回ろうかなぁ!


 そう思い、一瞬コメント欄に目を向けたのだが、そこに変な文字があった。


 ――規約違反を検知しました。配信を停止します。ペナルティとして一週間の配信停止が課されます。


「…………えっ?」


 マグマが周りにある中、僕はピシャリと固まって動かなくなる。理解できずにいたので、クロコに助けを求めた。


「く、クロコ、なにこれ!? 配信止まっちゃった!!!」

「うぅむ……配信中に映してはならないものが映り込んだっぽいのう。一体何が…………あっ」

「……あ? 何見てんだ」


 クロコの目線の先には、もはや服とは言えず、水着のような格好をしている駆動さんがいた。

 配信が止まったら理由がはっきりわかる。


「駆動さんなんて格好してるんですか!?」

「え、暑いからだろうが……」

「それのせいで配信が停止されちゃったんですーー! 一週間も配信できなくなっちゃいましたよ!!?」

「わ、悪かったよ……帰ったらそのダンチューブとやらの会社にお願いしてみるから……。いや、俺じゃなくて馬が悪いんじゃねぇか……?」

「責任転嫁は良くないぞ。悔い改めるがよいわ!」

「クソ……」


 こうして、強制的にペット紹介配信は終わりを告げ、一週間配信ができない状況に置かれてしまったのだが、駆動さんが説得してくれて三日間に減らしてもらえた。

 因みにお詫びとして、駆動さんは追加でお菓子とバナナを送ってくれるらしい。許してあげた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る