ファッション・スライム

「気を付けろ!コイツ、服だけを溶かすタイプのスライムだ!」


 リーダーのその言葉に、冒険者達は身を強張らせる。だが、ほんの少し遅かった。


「きゃっ!」


 スライムの溶解液が魔法使いの少女を捉えらる。だが、溶けたのは彼女の服のごく一部だけだった。


「なっ!?肩と背中の布面積が減っている!」

「ちょっぴりセクシーさを演出することであの娘の魅力を引き出したと言うのか!」


 戦士とリーダーが声をあげた。


「うおっ!!」


 その隙を突き、今度は戦士が液を浴びる。その結果、彼の鎧に施されたゴテゴテとした装飾達が溶けて消えてしまった。


「スッキリした印象になってワイルドさが際立つわ!」

「ファッションは引き算だとでも言いたいのか!このスライム!」


 魔法使いとリーダーは思いがけない発見に色めき立った。


「くっ!」


 最早お約束とばかりにリーダーも溶解液を被る。だが


「何も……溶けない?」


 その事実にリーダーは胸を張った。


「なるほど。つまり俺のファッションは完璧ということか」


 だがその発言に、戦士と魔法使いが異議を唱える。


「いや、服としてすら見られてないんじゃないの?」

「そうだそうだ!リーダーの服はダサい上にボロくて汚いからな!」

「なにぃ!?……おい、どうなんだスライム!答えろ!なあ、答えてくれ!」


 物言わぬスライムに詰め寄るリーダー。だがスライムは変わらずプルプルと揺れるだけである。

 ファッションセンス何てのは人の数だけあるものだ。故に、そこに答えを求めることこそナンセンスである。

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